この図形(4角中点)は,もうかなりいろいろな観点で扱ったことのある図形なのだが,ちょっと線の結び方を変えるだけで,別のバリエーションが展開できるということに驚き,上原さんの気づきに感心すると同時に,「どうして今まで気がつかなかったんだろう」と思う。(本文の詳しいところは読まずに,)そのアイデアで,自分なりにはどんな発展をさせることができるかを試みてみようとする。
当初,かなり簡単に自分の中でも証明を再構成できるだろうと思っていたのだが,試してみると,そう簡単にいかない部分もあるので,きちんと理解するために,上原さんの論文で展開されている「であろう」ことを,自分の中で次の3つの段階に分けてみた。
この中で,(1)は自分でもすぐに分かる,(3)はうまく組み合わせれば,なんとかなりそう,(2)が簡単そうなのだが,すぐには分からないと思った。
実は,これを考えていたときは旅行中で,作図ツールを使える環境になかった。使えるのはノートだけであり,そこにフリーハンドで書くことと,推論のみだった。また,上原さんの証明を読み直すこともできなかった。
なぜかというと,平行四辺形の場合と,台形(次図)の場合には,平行線と比の関係で,簡単に(2)が証明できるのだが,その証明は,平行性が一つもない一般の四角形の場合には成立しないからである。
そのため,この(2)は一般の四角形では成立しないのではないかという気がした。
そして,それを検証するためにいくつかの特殊な場合を想定して思い浮かんだのは,次の図である。
(この背景には,一般の四角形について,線分を延長すると,一点で交わるのではないかという予想(実際には誤解)があった。)
底辺BCの中点Mに対して,BCと平行な直線によってAB,ACの交点の中点を求めれば,AM上になるが,BCに平行でない直線との交点の中点ではうまくいかないのではないかと思ったのである。そして,(結果としては,3線分の延長が1点で交わるとすると)うまくいかないことの証明も作ってみた。さらに,このある意味では誤った方向性を別の方向に発展させ,別のことも見つかった。
このときの自分の考えは,一般の四角形では(2)は成立しないが,別の理由で(3)が成立するのだろうというものだった。そして,旅行から帰り,それまでに考えていたことを改めて確認し,整理しようとした。まず,GCで作図し,「確認」してみようと思った。ところが,そこで得られたのは,驚いたことに,次の図だった。
「なぜだ」
そして,変形しながら,次の図を得た。
こんな場合でも成立している。そして,この図をよく見ながら,以前の推論のどこが不適切だったのかを考えてみた。そして,次に確認したのは次の図である。
この図が示すように,一般には縦の3つの線分を延長したものは一点では交わらないのである。
そこで,思考の方向性を変えてみた。つまり,
(2)は正しいはずだ
という観点から考えてみた。
すると,次の考えが浮かんできた。
→ |
ここにいたって初めて上原さんの証明を「きちんと」読むことになった。読みたい場所は,一カ所。つまり(2)の証明である。特に,その初等幾何的な証明はどうすると可能なのか,それは書いてあるのかどうかである。
「あった」
4ページ目の「3等分の場合」というところで,次のような補助線を引いて,相似な三角形に帰着し,一般的に証明している。
なるほど。これなら,中学生でも納得できる初等幾何的な証明だ。
上原さんの証明に関わって,一区切りついた。と,そう思う間もなく,別のことが気にかかった。
それは,n等分の場合の面積の関係について,いろいろな関係式が見つかるのだけれど,それを簡潔に一言でまとめることはできないのだろうかということである。
そこで,「3等分の場合」について自分なりに見直してみた。振りかえってみると,ここでの番号の付け方が,上原さんの場合と違って,次のような番号を書いていた。
そして,上原さんの考え方と同様に,
(1) + (5) = (2) + (4)
(4) + (8) = (5) + (7)
(2) + (6) = (3) + (5)
(5) + (9) = (6) + (8)
などの形で式化してみた。
その結果,たとえば,
(1) + (9) = (3) + (7)
(1) + (6) = (3) + (4)
などが確認できた。
そのとき気づいたのは,場所を表すための番号として使ったはずの数なのだが,その「値」を考えても,そのまま式が成立していることである。
逆に数を眺めて見つかる「最も基本的な関係」と思われるものとして,
{ (1) + (3) } / 2 = (2)
に気づいた。
実際,測定をして確認してみると,
となっている。いずれ,きちんとした証明は必要としても,「3等分」の場合には,直線状に3つ並んでいる場合,
「両端の平均が中央」
という関係が推測された。
これを使うと,「3等分」の9つの数から示唆される関係の多くを導くことができることになる。
3等分のときと同じように,たとえば4等分では,
( 1)( 2)( 3)( 4)
( 5)( 6)( 7)( 8)
( 9)(10)(11)(12)
(13)(14)(15)(16)
から示唆されるような関係が成り立つと言えるのか。
この数列から示唆されるのは,縦方向にも,横方向にも「等差数列」になっている,いわば「2重等差数列」とでもいうべき配列である。
「2重等差数列」といえるのかどうかがすぐ分からないので,特別な場合をチェックしてみた。
平行四辺形の場合は,すべて同じ値となる。
台形の場合は,平行な方向に関しては,高さが共通となり,底辺がそれぞれ同じ長さとなるので,面積は等しい。そうでない方向に関しては,図のような補助線を引くと,等差数列となることが分かる。
しかし,これをそのまま変形し,一般の場合にすると,この証明は通用しなくなる。
そこで,上原さんの場合は「2等分」の結果が「3等分」等に応用できたことを考え,「4等分」などの中にも,「3等分」が応用可能なことから,「3等分」での関係を振りかえってみると,
(1) = a
(2) - (1) = d
と置くと,
(3) + (1) = (2) * 2
(3) = (1) + {(2) - (1)} * 2
(3) = a + 2d
だから,「差が等しい」ことを意味している。
つまり,「4等分」さらに「n等分」について,
「同一方向に関して,等差数列をなす」
ことが示されることが分かった。
また,縦と横との関わりを考えると,「2等分」での関係を次のように使えることが分かった。
(1) = a
(2) = a + d1
(3) = a + d2 とすると,
(1) + (4) = (2) + (3) より
(4) = a + d1 + d2
これを繰り返し使えば,
a | a+d1 | a+2d1 | a+3d1 | a+4d1 |
a+d2 | a+d1+d2 | a+2d1+d2 | a+3d1+d2 | a+4d1+d2 |
a+2d2 | a+d1+2d2 | a+2d1+2d2 | a+3d1+2d2 | a+4d1+2d2 |
a+3d2 | a+d1+3d2 | a+2d1+3d2 | a+3d1+3d2 | a+4d1+3d2 |
a+4d2 | a+d1+4d2 | a+2d1+4d2 | a+3d1+4d2 | a+4d1+4d2 |
などと, 横 i , 縦 j の場所では, a + i*d1 + j*d2 となる。
つまり,次の示す「カレンダー」と同様の性質を持つということになる。
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 |
8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 13 | 14 |
15 | 16 | 17 | 18 | 19 | 20 | 21 |
22 | 23 | 24 | 25 | 26 | 27 | 28 |
29 | 30 | 31 | . | . | . | . |
1 | 1+1 | 1+2 | 1+3 | 1+4 | 1+5 | 1+6 |
1+7 | 1+1+7 | 1+2+7 | 1+3+7 | 1+4+7 | 1+5+7 | 1+6+7 |
1+2*7 | 1+1+2*7 | 1+2+2*7 | 1+3+2*7 | 1+4+2*7 | 1+5+2*7 | 1+6+2*7 |
1+3*7 | 1+1+3*7 | 1+2+3*7 | 1+3+3*7 | 1+4+3*7 | 1+5+3*7 | 1+6+3*7 |
1+4*7 | 1+1+4*7 | 1+2+4*7 | (1+3+4*7) | (1+4+4*7) | (1+5+4*7) | (1+6+4*7) |
これまでの議論は,
(2) = {(1) + (3)}/2
などが成り立つことを前提に行なってきた。
作図ツールでの実験的な結果からは,ほぼ正しいことが分かっている。しかし,その証明はしていない。
証明はしていないが,それことを前提としたら,いろいろな結論を導くことができた。つまり,これは証明する価値があるということだ。
「2重等差数列」という結論が一段落したので,次に,この「前提」を証明することにしてみた。
まず,最初は,「2等分」の場合の結果を,「3等分」に応用してみることを考えた。たとえば,
の中にある,
(1) + (5) = (2) + (4)
(2) + (6) = (3) + (5)
をもとにすると,次の2種類の結果が得られる。
(1) + (6) = (3) + (4)
(1) + (3) + 2 * (5) = (4) + (6) + 2 * (2)
しかし,同一の行(あるいは列)のみの関係式にはならない。
行の数を増やしてみても,最上段と最下段を使った結果は得られるが,やはり,同一の行(あるいは列)のみの関係式にはならない。
「なぜだろう」
そこで,考え方を切り換えてみた。
「2等分」の結果だけでは証明できないのではないだろうか。
そして,「2等分の結果を満たしても,2重等差数列にはならない例を作ってみようと考えた。その結果,次のものができた。
(2重等差数列となっている例)
1 | 4 | 7 |
2 | 5 | 8 |
1 | 4 | 6 |
2 | 5 | 7 |
このことから,「別の図形的な性質あるいはそれから導かれることを使わなければいけない」ということが分かった。
そこで,次の図について考えることにした。
次の2種類の三角形分割を考えてみた。
A | ||
B |
Aに関しては,上図に示されるような面積の相等関係がある。両端の(緑色の二つの)三角形と中央の四角形の綿製が等しいことが証明できればいいのだが,私には見つからなかった。
逆に,Bに関しては,かなり簡単に見通しが立った。
まず,四角形に関して証明したいのと同様の関係を上の三角形と下の三角形のそれぞれについて証明できればいい(実質的に片方のみでいい)。
しかも,底辺の長さは等しい。そのため,それぞれの三角形の高さを h1, h2, h3 とすると,
(h1 + h3 )/2 = h2
が証明できればいいということになる。
ここで,上の辺は3等分されているので,そこから同一の直線に下ろした垂線の足も等しい距離をなすことになる。
そのため,上記の
(h1 + h3 )/2 = h2
は成立する。