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複素数:写像の観点からの考察(2)

- 「逆数」の特徴 -

これまでの経緯

これまでの探究はこちらにあるが,四則演算について調べることから,逆数の特異性が明らかになった。
主な結果は,次の通りである。

直線の像を少し詳しく調べる

GCデータ結果
x軸平行
y軸平行
原点に近い
原点を通る

これらの結果から,原点を通る直線はやはり原点を通る直線に,原点を通らない直線は,円に写ると推測される。
また,直線を,半径が無限大の円と考えれば,広義の円の集合が広義の円の集合に写ると考えることもできる。

円の像を少し詳しく調べる

GCデータ結果
円1
円2
円3
円4
円5

以上の結果から,直線の場合の結果をさらに裏付けるべく,

という結果が分かる。
このように,直線を「広義の円」と考えたとき,前回の結果は次のようにまとめ直すことができる。

変換の特徴直線性広義の円
平行移動保たれる保たれる
拡大+回転保たれる保たれる
逆数?保たれない保たれる

角の像を少し詳しく調べる(1) 直角の場合

角度をどう考えるかはそう簡単ではない。まず,直角の場合を検証してみると,
まず半直線で角を作る
角の像を描く
拡大してみる
像に重なる円を追加
接線を追加

このことをいろいろな場合について検証してみれば,直角以外の角に関しても保存されるのかどうかを実験してみることはできよう。

角の像を少し詳しく調べる(2) 通常の角の場合

通常の角についても考えるためには,上記では,像に重なると思える円を適当に追加したが,元の角を動かしたときに,この円も動くように,きちんと作図すれば,より確証を得ることができる。円は3点が決まれば決定するので,半直線上にもう一点取り,その像を使って像の円を構成してみることにする。

まず半直線で角を作る
角の像を描く
像の円の候補を作図し測定
確認

なお,上記では,半直線による角の像を考えたが,より一般に,円と円の角度が保存されることも同様にして確認できる。

「逆数」の変換がどういう特徴を持つのか

以上のことから,少なくとも,逆数の変換は次の特徴を持つことがわかった。

「逆数」の変換と同じ特徴を持つのはどのような演算の集合か

上記の特徴に関しては,これまでの,「和」,「積」に関しても成立する。そのため,次のような演算に関しても,上記の特徴は成立する。

特に最後の式の形は今までの式をすべて含む形の式である。
(これらは,一般に,一次分数変換と呼ばれる。)
これまでの結果から,一次分数変換では,広義の円が広義の円に写ることが実験的に確証されているが,逆に,広義の円が広義に円に写るような写像が,この形に限定されるのか,否かは,より詳しく調べてみなければならない。

複素数の別の式はどのような特徴を持つのか

さらに,次のような式を調べてみる価値はあるだろう。