研究授業構想(当日配付指導詳細案)


ア 単元 図形と合同

イ 本時の授業構想  「四角中点」

【問題を把握する】

 昨日の授業で学習した初めの図形を覚えていますか。                   

 これは昨日やったことを単に思い出させるための発問ではない。昨日の図形を基に本時の問題を予想させる発問につなげるための発問である。つまり,昨日学習した「三角形,辺の中点を結ぶ」という図形から,本時の授業で扱う図形を予想させたいのである。

 なお,前時の授業は「中点連結定理」を発見し,証明方法を理解する時間であった。しかし,あえてこちらから「中点連結定理」という言葉は出さない。中点連結定理という言葉より「三角形,辺の中点」という言葉の方が発展性があると考えるからである。子どもから出た場合は当然取り上げ,大きく板書しておきたい。

 さて,この図形を基にして,今日の問題を考えていきたいと思いますが,先生はどんな問題を出すと思いますか。                                   

 「先生は次にどんなことを言うと思いますか,どんな図を描くと思いますか」といった発問は,この学級では,しばしば投げかけてきた。子どもたちにはそれほど奇異な発問ではない。したがって,だれか一人は「四角形,辺の中点」といったことを発言してくれるのではないかと思っている。ひょっとしたら,「三角形の3辺の中点を結んで・・・ 」などといった発言が出るかもしれない。大いに賞賛しながら,「実は私は違うことを思ってました」という言葉で逃げておきたい。

 この段階で,他に考えられる発問としては,「この図を基にして問題を作ってみよう」という発問である。問題作りをさせ,子どもから出された問題を基にあらかじめ計画した教師側の問題に流れていく展開がある。この発問は確かに優れているのだが,子どもの側にすれば,「なんだ,問題作りだけさせておいて。結局,先生の都合のいい問題だけをやるんじゃないか」といった気持ちを起こさせることになるのではないかと思う。

 もっとも「そんな勢いのいい子どもを育てられるのなら育ててみろ!」と自分自身にいいたいところもある。このようなことを考えて,今のところは「先生はどんなことを言うと思う」という発問を投げかけていきたい。その中で,自分が考えていること以上のことが出たら,素直に喜ぼうと思っている。そして,私の指導計画にはありませんので・・・ とあっさり謝りたいと思う。

 <ここまで計画通りにいくとして>

 * 指導案というのはそういうもので,うまくいくことを前提として書くものである。本番の授業で,この計画からずれた場合にどうするのか,そこが教師の腕の見せ所である。このところが楽  しめるようになると,まさに名人といわれる域に達するのである。自分は子どもの考えを生かせず,ごまかすばっかりで,授業をやるたびに楽しむどころか苦しいだけで,子どもより先に自分自身が問題解決のエキスパートにならなければいけないと思うことが多い。教師がへなちょこ問題解決者であれば,優れた問題解決者が育つはずはない。

 そうです。○○君が言ってくれたように,こういう問題を考えたいのです。         

 ここで初めてワークシートを配付する。

 問題文に合う図を書きましょう。                           
 四角形ABCDの4辺AB,BC,CD,DAの中点を,それぞれ,E,F,G,Hとする。
そして,線分EF,FG,GH,HEを引く。                      
 図を書き始める前に質問はありますか。                  

 上記の文章は問題文ではない。単に状況を説明しただけの文章である。初めは「このとき四角形EFGHはどんな四角形になるか」という問いかけを含めることを考えていた。しかし,「何か気づきますか」という問いかけをするのであれば,四角形EFGHと限定しない方がよいと考えた。また,問題文の把握の状況をつかむために図を付けず,上記のように発問する。これなら誰でも取り組めるはずである。初めから作業さえできない授業では,今までの学習が十分身に付いていない子どもはまったくお手上げである。

 なお,「図を書き始める前に質問はありますか」と問うのは,「四角形というのはいろいろな形を含んでのことか」といった質問があるのではないかと思うからである。前時では,「先生,三角形ってどんな三角形でもいいの」という質問があった。

 作図についてはフリーハンドでも定規を使ってもいいことにする。特に指定はしない。

【個人(二人)追究をする】

 * 黒板に問題文に合う図を書いたあと,

 問題文がかけたようですね。自分のかいた図を見て,何か気づくことがありますか。 

 一つの図を見て,どれだけのことに気づくか確かめる発問である。

 挙手があれば発表させ,なければ次のように発問する。

 一つの図ではなかなか気づかないようですね。近くの人の図を見て回ってください。何か気づくことはありますか。                                  

 コンピュータを活用するための布石である。一つより二つ,二つより三つの図を見た方が気づくことが多いことを認識させる意味がある。

 では,何か気づくことはありますか。 

 ここではいくつかの気づきが発表されることを望んでいる。

 ・ いつも四角形EFGHは平行四辺形。

 ・ 三角形と四角形ができる。

 ・ 辺EFは対角線ACの半分。 など

 しかし,あまりにも多くの子どもが多くのことに気づくようでは,コンピュータを使う必要はない。

実は,前時の中点連結定理では,この段階で「平行,2分の1,三角形と台形ができる,△ADEを拡大すると△ABC」というのが出てしまっていた。もっとも,すべての子どもが気づいたり,認めたりしたわけではない。子どもの顔を見ると初めから分かっていたという顔をしているが,本当はコンピュータを通して気づいた子どもも多くいたと思っている。前時のものは非常に簡単な図であるので,静的な図でも気づくことはできる。また,気づくことをあげてもそれほど多くのことを出すことができる図ではない。しかし,本時ではコンピュータを活用してこそ,気づいたり,自分の問題としてとらえたりすることが多くなるはずである。したがって,ここではあまり多くのことが発表されないと判断している。

 なお,子どもの気づきについてはすべて受け入れていきたい。そして,図形を見る視点から「君は

図を全体で見たんだ。君は図を部分で見たんだ」というような投げかけをしておきたい。それが,図

の見方が豊かでない子どもへの指導につながるはずである。

 なるほど,図を二,三,見るだけで気づくことが多いね。さあ,この後,先生はどんなことを言うでしょう。 

 ああ,なんとわざとらしい発問。「先生は,コンピュータを使いましょうと言う」という言葉を期待してのこの発問。しかし,あえて発する。ここまで書いて,子どもがコンピュータの「コ」の字も言わなかったときは,私がどう切り抜けるかお楽しみを。

 そうです。そこでだ,○○君が言うようにコンピュータを使いましょう。          

 GCを使うのは2回目である。前時と本時である。なお,コンピュータはこの時に立ちあげることにする。VMの立ち上げの遅さを考えれば,初めからあらかじめGCを起動させておきたいのだが,そこまでしては・・・という気持ちである。

 ☆ GCのファイルから「四角中点」を呼び込ませる。教師の画面を転送して,四角形の変形の仕  方を確認する。

 さあ,今気づいたことを確かめたり,さらにいろいろな場合の四角形を考えてみましょう。気づくことをどんどん記録してください。                        

 なかなか子どもたちは書こうとしない。何か思っていると信じているが,書こうとしない。悩みの一つである。

 机間指導を通して,つぶやきや気づきをできるだけ拾い集めておきたい。そして,意図的指名に活かしていきたい。

【集団追究】

 では,コンピュータを使って気づいたことや考えたことを発表してください。       

 どれほど増えているか楽しみである。同時に一番心配な場面である。(私の表情で心情を察してください。)

 次のようなものが出てくるといい。

 部分で見て・・・ 辺と対角線の位置関係や長さに注目したもの

         例 * 辺EFと対角線ACは平行である。

           * 辺EFの長さは対角線ACの長さの半分である。

 全体で見て・・・ 出現する図形について注目したもの         

         例 * 四角形EFGHは長方形や正方形になるときもある。

           * 四角形ABCDがくさび形になっても四角形EFGHは平行四辺形。

 この段階で,「コンピュータを使っていろいろな図を観察すると,多くのことに気づくね」といい

たいなあ。                                        

 さて,出されたことにマークを付けてみよう。これは間違いないというのには「!」,そうかもしれないというのには「?」,間違いだというのには「×」を付けてみよう。

 この問いに対する授業の流し方は時間と子どもの様子で臨機応変に行っていきたい。

 では,まず「!」が多くついているものから明らかにしてみよう。             

 「四角形EFGHは平行四辺形である」ことを証明するように持っていきたいが,これもここまでの展開の様子で判断していきたい。ひょっとしたら,気づきを集めるともうすでに証明が終わりということになるかもしれない。

 この証明に入り,行き詰まっている子どもが多いときは,できた子どもに中間発表をさせ,証明のための大切な要素を全員に知らせていきたい。なお,証明については簡単に口頭で行っていきたい。

【まとめ】

 みんなの力で,うまく説明ができました。さて,次はどれを明らかにしたいですか。    
 みんなの考えを聞いておきたいと思います。                      
 

 この最終発問まで行き着くかどうか,実に不安である。

 このような発問をするのは,次時の学習内容の決定を子どもに任せたいという気持ちからである。                             (以上,都合により45分授業案)

 


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