研究を進めるにあたって 及び 具体的実践について


(1) 研究を進めるにあたって

一番心配されることは教科が限定された研究において,数学以外の委員の関わり方であろう。担当教科外であるために,関わり方が難しいと思われるかもしれない。

しかし,むしろ教科が違っているがために,新鮮な目で実践を見ることができ,出される質問や意見は貴重なものになるはずである。また,本当にコンピュータを使うことが有効であれば,  それは教科を越えて,多くの教師の賛同を得られるものであるはずである。そうでなければ,けっして真のコンピュータ活用は定着しない。

この研究部会の協議における質疑・意見はできるだけ記録し,それを報告の中に残すことにする。それは次年度たとえ教科が代わっても,研究を積み上げる上では有効な資料となると考えるからである。また,用意された資料や記録を,その都度,開発者の飯島氏に送付し,できればコメントがいただけるようにお願いをする。考えてみれば,本市のコンピュータ研究は従来市内だけにとどまって研究が行われてきた。しかし,ネットワーク時代をふまえれば,少しでも市外への発信をし,広く他からの意見を採り入れていくことが必要であると考える。そういった意味で,ネットワーク環境についても先進的な提言と取り組みをされている飯島氏とのコンタクトをとることは有意義なことである。

また,従来行われてきた報告書配付については,今年度は全員配付の意向が出された。中学校部会の活動を考えた場合,本年度の取り組みをまとめたものを市内の数学科教員全員に対して配付をすることにする。「実践検討がされた指導案・各学校用のGCのシステム・実践事例集などの資料」をセットにした研究報告書を数学科の教員に配ることで,研究成果が従来より浸透することになると考える。

(2) 具体的実践について

実践はGCというソフトの性格上「図形単元」となる。現行の教科書,愛日教育課程,さらに来年度から採用される教科書を考えてみたとき,無理なくコンピュータ活用ができる項を抽出することが大切である。

こういった観点で考えたとき,中学2年生の単元「図形と相似」の学習内容である中点連結定理の学習がある。なお,これは次年度の教科書では「図形と合同」という単元に移動している学習である。

なぜこの学習が先に示した無理なくコンピュータ活用ができる項であるか,詳しく述べておきたい。現行の啓林館の教科書中2P165に次のような記載がある。

例題2  四角形ABCDの4辺AB,BC,CD,DAの中点を,それぞれ,P,Q,R,Sとする     と,四角形PQRSは,どんな四角形になるか。
考え方 問題に合う図をいろいろかき,四角形PQRSの形を観察して,予想を立ててみる。
    以下略。 

飯島氏が指摘しているが,「問題に合う図をいろいろかき」といった活動はまさにGCの独壇場である。指定した図形の性質を保ったまま自由に変形できるGCは,子どもたちの活動を大いに支援するであろう。

「わずかこれだけのことで・・・」と思われるかもしれないが,この教材は実に奥が深い。飯島氏の講演には必ずと言っていいほど掲げられているし,GCフォーラムでもこの課題の発問がいくつかあげられ,実践者に選択権がゆだねられている。

また,この例題を支えている中点連結定理そのものの発見にこのGCを活用してもよい。まとめてみると,「教科書にコンピュータ活用を想定した記述があること,単に図形を変形させることだけで活用ができ単純であること,アプローチの仕方は様々で研究実践をしていく価値があること」より,この項が適切であると判断した。

さらに,この項であれば,GCの操作も簡単で,しかも教科書に合致していることより,多くの数学科教員が実践することが可能であること,また,本研究委員会のスケジュールを考えたとき,「図形と合同」単元に移動し,秋に実践することが可能であることが挙げられる。現に来年度からは教科書の位置づけ変更により,秋に授業が行われることになっている。

 


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