研究授業案
第2学年G組数学科学習指導案
平成8年12月18日(水) コンピュータ室 指導者 玉 置 崇
ア 単元 図形と合同(中点連結定理)
イ 単元における本時の授業の位置づけ
現教科書では,中点連結定理は単元「図形と相似」に位置付けてある。しかし,来年度の教科書は,相似の基本性質を中点連結定理を使って論理的に扱うためにその前の単元「図形と合同」に移動されている。そこで,今回は来年度に活かすために中点連結定理を単元「図形と合同」に位置づけることにする。
なお,本時は「中点連結定理」を発見し証明した後の時間とする。課題は次に示す,いわゆる「四角中点」の問題である。(現行教科書 啓林館中2 P165)
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* 研究授業では,四角形PQRSは四角形EFGHと表現する。
ウ 本時の指導案を立案するにあたって
(ア) 研究授業のねらいについて
Geometoric Constructor の活用事例の代表的なものが,今回行おうとするいわゆる「四角中点」の問題である。愛知教育大学の飯島康之氏のホームページ「GCワールド」の中には,「四角中点」というタイトルで,問題図とともに次のような記述がある。
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授業をするにあたって一番興味を持つのは,やはり「どんなことに気づきますか」という問いである。飯島氏も講座等の冒頭でこの発問を取り扱うことが多いと言っている。それはオープンな発 問として適したもので,またその意図が分かりやすい,同じ図でも解釈の仕方の多様さがよく分か るなどの理由から,教師を対象とした講座での発問としては有効であると述べている。しかし,「授業の場ではこの発問が適しているかどうかは分からない」とも述べている。
そこで,この発問を本時の主発問とし,この発問が授業で有効であるかどうか検証してみることにする。
初めに確認しておきたいのはどういう現象が起こったとき「有効である」と言えるのかということである。授業を評価する尺度はいろいろあり,一律に規定できるものではない。
飯島氏が有効であると述べている主な理由に上述したように「オープンな発問」であることがある。これを授業レベルで考えると,この発問は子どもの多様な見方を生み出し,課題を生み出す発 問であるということである。つまり,この発問によって,どれだけ子どもは多様な気づきをするのか確かめてみたい。そしてその気づきが子どもの問題意識を高めるかどうかを確かめてみたい。ま た,そこに至るまでの指導過程,そして,個々の気づきを全体の学習へ結びつけるまでの指導過程について実践考察をしてみたい。
(イ) 主発問までの布石
授業開始からGCを活用して,「外側の四角形をいろいろ変形させて,気づいたことをどんどん書きましょう」と授業展開をしたのでは,変形する意味が分からないまま,気づかされているという状態の子どもが出てくるのではないかと思った。
そこで,主発問に至るまでに,変形させる意義が子どもに納得できるように展開をすることにする。
そのためには,いろいろな四角形で確かめておく必要がある→図をたくさん描くのは大変だ→素 早く描ける方法はないかな→道具(コンピュータ)を使ってみようといった気持ちになるような展 開を考えておきたい。
(ウ) 子どもに気づきを記録させる方法
中学校は40台のコンピュータが設置されており,一人1台のコンピュータ使用ができるように なっている。しかし,今回は二人一組で1台のコンピュータを使用することにする。これは,二人一組で行わせた方が,コンピュータの画面を仲立ちとして子ども同士のつぶやきが表出しやすいと 考えるからである。
また,気づきを記録させたり,まとめさせる手だてを明確にしておく必要がある。検証の中心となるからである。授業者としては,気づいたことはすべて書いてほしいのだが,1単位時間の授業では限界があるし,また表現力の差もある。子どもにストレスを感じさせない程度のベターな方法をとりたい。
この部分での方法をGCフォーラムや今までに出された書籍・資料等を参考に考えてみると,ドットによる方眼紙をワークシートとして用意しておき,フリーハンドによる図の記録を援助する方法,活動を始める前にあらかじめ調べる観点を明確にしておき,表にまとめるように指示しておく方法などがある。真っ白な紙を与え「気づいたことを何でも書いて!」という方法が一番簡単なわけだが,今回は右半分は白紙,左半分はドットによる方眼紙というワークシートを用意し,「好きなように使いなさい」という指示を出しておきたい。それぞれがどんなことを気づくかということと同時に,どちらを活用するかも考察の対象としたい。
(エ) 子どもの気づきをまとめる方法
全体の「気づき」の集約は挙手により行う。つまり,気づきを発表させ,その都度,同じことを気づいていた子どもを挙手により把握していきたい。その場合,ワークシートに記録をしていない場合も認めていきたい。また,机間指導の中で子どもの気づきをできる限り集約しておき,意図的指名により発表させ,より多くの事柄が発表されるように配慮していきたい。
また,それぞれの気づきを全体での課題に昇華していく部分は,発表された気づきについて自分なりに「これは間違いない!」「そうかもしれない?」「間違いだ×」という記号を付けさせる作業をさせたい。これは,自分で気づいた事柄をこの発問によって再度見つめさせることにより,「気づき」から「問題設定」へ意識を高めることができるのではないかと考えるからである。
エ 本時
(ア) 目標
○ 進んで図形の性質を見つけ表現しようとする。
○ 四角形ABCDをいろいろな形に変形させることを通して,いろいろな図形の性質に気づくこ とができる。
○ 四角形EFGHが平行四辺形であることを証明することができる。
(イ)学習過程
学習活動 △発問 指導上の留意点
1 問題を把握する。 △ 次の問題文に合う図を書きましょう。 四角形ABCDの4辺AB,BC,CD,DAの中点を,それぞれ,E,F,G,Hとすると,四角形EFGHはどんな四角形になるか。
△ 図を描いてみて,気づくことを書いておこう。 △ 黒板に代表的な図を描いている人にその図を描いてもらいます。4つの図をみて,気づ くことを書いてみよう。 △ 気づいたことを発表しよう。 ・ 四角形EFGHは平行四辺形だ。 2 個人追究をする。(コンピュータ使用) △ 四角形EFGHを変形させて、気付いたことをどんどん書きましょう。
3 集団追究をする。 △ みんなの判断を挙手で確かめます。 △ 「!」の印が多く付いたものから確かめておこう。 4 まとめをする。 △ 次の時間に明らかにしたいことは何ですか。 |
・ 問題文に合う図を描かせることを通して,問題文の把握の状況をつかむ。
・ 一つの図でどれほどのことに気づくか確かめておく。ただし,発表はさせない。
・ GCを使う意義を押さえる。あらかじめ立ち上げておいたGCのファイルから「四角中点」を呼び出させる。 ・ 板書されていない事柄を発表させる。 ・ 意図的指名により。学級全体の気づきをできるだけ出させる。
・ 板書された事柄について検討させる。 ・ この事柄が証明できたことで,「気づき」の中ではっきりするものを示させる。
・ 個々の問題意識を高めておく。 |