授業研究協議録


出席者 (計 19人)    小牧市コンピュータ委員会中学校部員(8人)

            愛知教育大学助教授 飯島 康之  愛教大附属名古屋中 八槙 直幸

            応時中学校長 竹内 浩    北里中学校  石川 学 

            村中小学校  前田 信三    愛知教育大学生<飯島ゼミ生>(6人)


授業者反省

・ 授業者の気持ちが分かる読んで楽しい指導案は,研究協議を良いものにするためにはよい指導案であったと思う。

・ 最初の発問は子どもが予想通りに反応しなかった。発問自体がよくなかったのか,こういう展開自体が悪かったのかご意見をいただきたい。

・ 一番困ったところは最後の部分である。授業が進むにつれて指導案通りの発問はまずいという判断をした。子どもたちすべてが行っていないことについて判断を求めることはまずいということに気づいた。このところの展開についても意見をいただきたい。

 

研究協議

石川 前時の展開について説明を。

玉置 中点連結定理を発見させるために,紙の上に図を描かせ発見させた。GCを使ったが紙の上で気づいたこと以上の発見はなかった。証明するところで終了した。

八槙 マウスで図形変形をやったのはなぜ? マウスでの変形と矢印キーを使った変形との気づきの違いは?

玉置 コンピュータが9801VMであるために,マウスを使わざるをえなかった。

竹内 本時の目標が3つ書いてあるが,その3つに順序をつけると?

玉置 一番のねらいと言えば、たくさん気づくことである。

  男女一緒に座らせた意図は?

玉置 教室の状態をコンピュータ室に持ち込むために。

学生 中点をとるときはコンパス等を使う指示はしないのか?

玉置 フリーハンドでいいと考えている。

竹内 来年度から教科書ではこの題材を扱うところが違ってくると書いてあるがどうしてか。

玉置 啓林館の教科書では相似の導入をスムーズにするために変更している。来年度の教科書は,時間数の関係から「平行四辺形であることを証明しなさい」となっている。

学生 「先生はどんなことを言うと思うか」という質問は,他にはどんなときに?

玉置 かなりいろいろな場面で意識して言っている。

学生 最初の導入は中点を3辺でとった場合を扱っておくと良かったのではないか。

飯島 中に三角形を作っておいてやった方が四角形が出てくるのではないか? 今日の問いは「答えろ」というのは無理ではなかったか。今日の授業は,こういうものだよと見せるための段階,これこれについて調べようとある程度調べ方を限定して行う段階に比べて, 勝手に調べようという今日の段階は思い切って生徒に任せる上の段階の授業である。いろいろな四角形について調べよというのは今までに経験があるか? 平行四辺形というのは,いつでも平行四辺形になると思っていったのか,僕のは平行四辺形になったと言ったのか分からない。もう少し神経細やかに対処すべきではなかったか。

玉置 今まで四角形についていろいろ調べようという活動はない。これをきっかけにしたいと思っている。

学生 GCで座標を出していた子どもがいたが,対応表を作らせるのなら,かえって邪魔になったのではないか。

玉置 前時で座標の機能を教えた。理想論であるが,こういうことを使うとうまくいくぞといったことが自然に伝わるような教科経営をしたい。

石川 自分の見ていた子どもは目的があって座標を出していた。新しいものを生み出すという点では座標も良かったと考えた。

竹内 小学校の算数だと必ず見通しの場面がある。今日の授業も気づきがあって,生徒たちの課題意識につながっていくと思う。コンピュータは生徒に平行四辺形になりそうだという気づき,課題意識を持たせた。こういった流れを大切にすべきで,社会科でも同様なことが言える。ただし,初めの発問で生徒から四角形の場合を出させなくてもいいのではないかと思ったが、それについてはどうか。あえてやる必要があるか。

石川 僕は初めから四角形を提示するような授業はやりたくない。ただし,導入時にもう1個中点を扱って、それから四角形に移った方がいいと思った。

竹内 時間的なものがあるから,四角形と言ってもいいじゃないか。

石川 こういう授業を続けていきたいと思う。しかし,先ほど言ったように布石は必要だった。

玉置 当日に指導案を改めて作ったのは,子どもから出るのではないかと思ったからで,その読みが違っていたということだ。

八槙 子どもの発想の基は,すべての場合をやり尽くした上で、今度は違う図形・・・ という発想になるのではないか。 「この図形を基にして」という発問はまずいのではないかと思った。

玉置 なるほど,図はまずかったと思った。「三角形,中点」という言葉だけを書けばよかった。こういうとそうまでしてやりたいのかと言われるが。

前田 ねじれた四角形を子どもがコンピュータで作ったが,あれを四角形ということを問題にしなくていいのか,また,これを考えていいのかと聞いた子どもはいなかったか。

玉置 一人そういう質問をした子どもがいた。そういう疑問を大切にしたいと思った。

石川 くさび形は四角形であるという押さえはしてありますね。くさび形を書く子どもがいたのは,日ごろの授業の賜物で,ねじれた四角形はGCの賜物であると思った。いろいろな図形が出てくるのがコンピュータのよさで,思わぬ発想も出てくるのではないか。気づきを発表し合って,そこから問題を作っていく,そんな授業づくりをしたい。

司会 今日の課題で,コンピュータを使わない場合と比較してどうか。

学生 この課題についてはGCを使ったからといって,それほどよさはないのではないかと思った。もう少し複雑な課題の場合がいいのではないかと思った。コンピュータを使うと余分なこともたくさん出てきて困る場合もある。

学生 初めに平行四辺形であると手を挙げた子どもとコンピュータを使った後の挙手の数はかなり違っていた。コンピュータを使ったよさではないか。

大竹 紙の上でやると作図の時間や発想の限界がある。自然にいろいろな図ができるのがいい。違う気づきが出る場合は,中の四角形に限定させるとか,いろいろ手があるのではないか。

八槙 いろいろな図を調べるということであれば,一人の子どもが3つ書かせれば40人で、120個の図が描ける。そういう点ではGCは必要ないのではないか。

前田 すべての子どもが平行四辺形になるんだという感触を持ちながら証明するのか,たまたまこうなっただけだといった程度で証明するのでは,かなり違う。GCを使ったおかげで,ほぼどの子も平行四辺形になると思って証明に入れたのではないか。

司会 自分が問題を考えた場合,外側の四角形はせいぜい長方形ぐらいを思うだけだ。コンピュータを使っていろいろな図を見ることができ,どんなときでもなるんだなあと認識できると思った。  

野田 コンピュータを使うことによって,例えば作図の段階で困る子どもがいないなど,一番やりたいところに集中できる。理科でもコンピュータを使って時間短縮することができ,その授業の核の部分に時間を費やすことができる。

竹内 教育課程を考える場合,コンピュータをどこで使えば数学の力が豊かになるか,また能率があげられるかといった明確な観点をもって考えていく必要がある。今日は「気づく」という点ではとても有効であった。今日の気づきを次の展開にいかしていくことができるはずだ。 コンピュータを教育課程に位置付ける意味では,今日のように活用する観点を明確にして考えていってほしい。 

飯島 一般の教材とこの教材と分ける必要がある。この教材は,八槙先生の言われるように紙の上でもできる教材である。だから,今日の教材はコンピュータを使ったから,いろいろと調べられるようになったと言われるとそうではなく,いろいろな方法があるはずだ。 今日の教材でGCを使うことは,後で手で描いたら分からないような図でも同じようにいくんじゃないかと思う思考を持たせる上で価値があるわけで,ある意味の布石であると 考える。子どもが角が変わらないといったが,変形させることを考えた場合,三角形と四角形ではかなりの違いがある。四角形は1点を動かすだけでは目的とした四角形は作りにくい。

 また,いろいろな四角形を作ろうねといった時,作りやすい四角形と作りにくい四角形がある。くさび形やねじれの四角形は作りやすい部類である。いろいろな四角形を調べたいなら,○○と○○といった四角形があるね,それを作ろうと指示する必要がある。

  今日の授業は,平行四辺形というキーワードをもっと吟味して扱うべきだったと思う。平行四辺形になった,いつも平行四辺形になったという段階はかなり違う。

前田 神戸先生からのコメントだが,1点を動かすと角は変わらないという発言は大切にすると良かった。あの発言は部分的な見方のよい例で,うまく取り扱うと証明につなげることができたのではと思う。

飯島 男の子と女の子が和気あいあいとやっているのがいいなあと思った。正しい答えを発表するだけでなく,いろいろな気づきをもっと前に出す経験をもっと積ませていきたい。 コンピュータを使うことによって,それぞ れの生徒の気づきや個の違いを引っぱり出すことができて,授業がさらに豊かになるはずだ。

 

* 1時間10分ほどの研究協議での発言を主旨をできるだけ曲げないようにまとめたものである。 また、大学生の皆さんの氏名は、録音の状態が悪く明確に区別できなかったため、どの発言も一括して学生と表記した。        


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