三年生の皆さん、ご卒業おめでとうございます。また、ご臨席の保護者の方々におかれましても、お子さまの晴れの姿を目の当たりにして感慨もひとしおであろうと思います。あらためて、お祝いのことばを申し上げたいと思います。また、本日の卒業証書授与式に、刈谷市教育委員会学校教育課指導主事の牧原正己様、愛知教育大学学長の後藤ひとみ様はじめ、多くのご来賓の方々にご臨席たまわり誠にありがとうございます。
さて、三年生のみなさんにとって、本校での三年間で印象的だったこと。どんなことを思い出しますか? 三年前、雨の入学式でした。県内各地から集まった200名。みなさんを前にして、「ここに来てよかった」そう思ってもらえるように努力しないといけないなと改めて実感しました。研究室訪問、出前講義では大学の先生方を、教育実習や健康診断などでは大学生・大学院生を、あるいはときどき利用する図書館や生協など、大学に関わる人々・環境、そしてそこにある空気を実感して特色ある高校生活を過ごしてくれたのではないかと思います。
当たり前と思ってきたことは決して当たり前ではない。そんなことを体験した学年でもありました。修学旅行が台風で延期されるなんて、初めての経験でした。でも、12月の沖縄って、意外によかったみたいですね。センター試験の会場が附属高校以外になったこともまた、びっくりでした。でも、試験会場で拝見したみなさんは、ちょっと緊張しながらも落ち着きを持って行動していて、チャンスとして生かしてくれたに違いない、そう感じさせてくれました。
みなさんたちとの三年間、私たちはみなさんに向かって、いろいろなことを仕掛けていきました。いろいろな手応えがありました。一年生の芸術鑑賞会で、入り口で待っていたとき、初対面なのにいろいろな話を聞かせてくれた子もいました。校長室のドアに、内輪差の問題を掲示したら、「家で話題にしたら、お父さんがいろいろと話をしてくれたんだ」と語ってくれた子もいました。「サイクリング部を作りたいのですが、許可してもらえないでしょうか」と直談判にきた子もいました。「校長室でお弁当を食べてもいいですか」と一緒に食事をしてくれた子もいました。「空いている花壇に花を植えてもいいですか」と許可を求めてきた子もいました。みなさんのあたたかさを感じたひとときでした。
普段の授業で見える景色と、研究授業で見える景色、あるいは教育実習で見える景色、とても興味深く拝見しました。物おじせずに話し合い、理路整然と発表する。私も何度か別の高校で出前授業をしていますけど、そういう度胸は、決して他校に負けていません。大したものです。不満はなかったかといえば、…ないわけではありません。わからないことがあるとき、もっと悔しさを感じて表現してもいい。実習生のへたな授業を拝見しながら、生徒のみなさんに申し訳ないと思うことときどきあります。おとなしくそれを受け入れてくれるのがみなさんのやさしさですが、「この授業のここがよくない」って、実習生や私たちにもっと文句を言ってもいいのにとも思いました。もっと戦ってもいい。もっとたくましくなってもいい。そう思います。
でも、みなさんのたくましさは、部活動のいろいろなところでも見せてくれましたよね。去年・今年と嬉しかったのは、長年指導していただいた先生が、そろそろ引退の時期を迎えられたなと思う部が、大きな成果を上げてくれたこと。ダンスにしても、合唱にしても、また陸上にしても、...。みんな先生思いなんだなと思います。思いをきちんと形にできるのは、みなさんのたくましさなんですね。きっと。
みなさんと過ごした三年間。世の中では実にいろいろなことが変化しています。一年生の一学期の終業式の日、覚えていますか? あの日、ポケモンGOが日本でも解禁になりました。世界中の人々が動くんですよ。ありもしないものを目の前に感じて。そんな拡張現実と現実の融合が市民権を得た日でもあります。ARとかAIとかIoTという言葉はそれ以降当たり前のものになっていきました。ピコ太郎。覚えていますか?私には理解できない笑いがYouTubeとSNSであっという間に拡散されていく様子は、「本物は世界に通じる」ことを体験させてくれた瞬間でもありました。逆に最近のSNSでの事件は、友達にふざける感覚で面白半分に行うことが、大きなリスクに結びついていることも実感させてくれ、SNSを使いこなすことに関して、まだ社会が成熟していないことを実感させてくれています。
そうやって大きく変化していく世界の向こうにあるのが、みなさんの未来です。少子化と言われる中、貴重な人材として活躍していくのが、みなさんの未来です。私たちの世代と同じ仕事と違って、もっと提案力が求められるでしょう。AIやIoTそしてロボットを使いこなす力も求められるでしょう。価値観がちがう人たちも納得し、共存できるよう、共感力が求められるでしょう。私たちの価値観も変わっていくはずです。何かを自分が所有することの価値は減り、みんなでシェアし、うまく使い、そして次世代につなげていく。お金よりも信用・信頼あるいはつながりが求められていく。そういう時代にあっては、目の前のことだけに捕らわれないおおらかさも大きな財産になっていくと思います。
本校の校訓、覚えていますか? あたたかい人間になろう。 たくましい人間になろう。 おおらかな人間になろう。
みなさんがこの三年間体現してくれた、この校訓。未来に通じる校訓です。卒業後も大切にしてください。
終わりになりますが、ご多用のところ、ご臨席を賜りましたご来賓のみなさまに、あらためてお礼申し上げます。また、保護者のみなさま。お子様方は、今日をもって本校を巣立ちます。この三年間で大きく成長され、この日を迎えることができましたことを一緒にお祝い申し上げますとともに、この三年間、本校発展のため、終始ご理解とご支援を賜りましたことに、心からお礼申し上げます。
卒業生のみなさんの今後の活躍を祈念し、式辞といたします。
平成31年3月1日