夏休みを迎えるに当たって,みなさんに二つのことをお願いしたいと思います。
一つは, リスク管理です。 西日本の豪雨災害の甚大さには, 本当に心が痛みます。 すぐに募金の企画書を提案してくれ, 実行してくれた生徒会のみなさん。 そして募金をしてくれたみなさん。ありがとう。
私たちの地域も, 大雨の災害と無縁ではありません。 2000年の9月。私は学生を引率し, 附属名古屋中学校に実習に行きました。 窓を見上げて, 附属中の先生に「強い雨が続くねー」と話したことを, よく覚えています。 その後も雨は降り続き, 名古屋を中心とした, 伊勢湾台風以来の大水害になりました。東海豪雨と言われています。 この近辺も例外ではありません。豊明市との間にある境川は何カ所も氾濫し, 西境の一部や大府市の一部が水に漬かりました。この近隣の池もあふれ, 何倍もの広さになって, 名鉄バスが通る県道も水没しました。 「強い雨が続くねー」と思ったとき, そこまでひどくなるとは予想もしなかったのです。
危険なのは雨だけではありません。もちろん暑さも異常です。 それ以外にも, 命につながるリスクはあちこちにあります。 まず, 自分でそれを察知し, 回避し, 自分を守るよう, お願いします。
もう一つは, 「チャレンジすること」そして, そこから「自分へのメッセージをつくること」です。 夏休みですから, 普段できないチャレンジをする人, 多いと思います。 大会で, どこまで勝ち進めるかを競う人もいるでしょう。 海外での経験を積む人もいるでしょう。 そういう大きなチャレンジではないけれど, 「ちゃんと受験勉強を続ける」ことがチャレンジの人もいるでしょう。
チャレンジは「する」ことだけに意味があるのではありません。 勝ち負けでいえば, 負ける人の方が圧倒的に多いのです。 たとえ負けたとしても, 「そこから何をつかむか」の方が大きいのです。 日々の受験勉強も同じことの連続のように感じるかもしれませんが, 小さなきっかけから「自分にとって印象的に思えたこと」をきちんとつかみ, 自分はどういうことを感じられる人間なのかをつかみ, 自分は何に向いているか, 次に何をすることが, 自分をより深められるかをつかむことも大切なのです。
たとえば, いい大学入試問題には, いいメッセージがあります。 たとえば, 国語や英語でいえば, 高校生が読むに値するいい文章が選ばれています。 数学も, 「なるほど」と思えるテーマを実感できるようにつくられています。 入試のための勉強ではなく, 自分の感性を伸ばしていくための勉強としても, 捉えてほしいのです。
私が高3のときに予備校の夏期講習のテキストで印象的だったのは, 英語の教材で, シャーロックホームズの「空き家事件」でした。 そこで学んだ知識もたしかにあるでしょう。 でも, それ以上に, 英語の楽しみ方を, ちょっとかいま見ることができ, 少し大人になったと実感したのを, 今でも覚えています。
みなさんにとって, 「この夏, ここが変わったね」 「これを面白いと感じられるんだね」 「こういうことをさらに続けるといいと思うよ」 そんな, 自分へのメッセージを贈れる夏にしてみてください。
そしてできたら, 9月になったとき, そのエピソードを教えてください。
以上で, 1学期終業式の式辞のことばといたします。