牛乳パックの問題
発問(1)
愛知教育大学数学教室 飯島康之
問題
1リットルの牛乳パックを振ると音がする。
音がするということは,空気が入っている。
さて,牛乳は一体,どこまで入っているのだろうか。
ご意見はこちらへ。お送りいただいたものは,以下で掲載あるいは,以下でリンクを掲載させていただこうと思います。
想定している探究の流れ
- まず振ってみる
- 予想をしてみる。肩の線の部分,その上下など3通りくらいに分かれる。
- 「正しいかどうか」を最も確認しやすいのはどれだろうか。(肩の線の部分)
- 測定してみよう。
- どこを測定したらいいだろうか。(高さ,二つの底辺)
- 底辺は両方とも7cm。つまり底面積は49。つまり,約50cm2
- ということは,高さは約20cmのはず。
- しかし,実際には,高さは19.5cmしかない。
- ということは,この予想では足りない。
- もっと上まで入っているはず。
- では,満タンだとしたらどうなるのか。
- アタマの部分はどういう形をしているのか。
- 四角錘
- 必要な部分を測定しよう
- 高さが約 2cm。(斜辺の部分は約4cm)
- 四角錐の部分の体積を計算する。
- これと直方体の部分を加えても1000cm3にならない。
- なぜだ。
- 訴えるか/実際に測ってみるか/あきらめるか...
- もう一度よく測定してみよう。本当に「7cm,7cm,19.5cm,2cm」か?
- (たとえば,7.1cmだとすると...)
- (7cmか7.1cmかは,どこをどう測るかによって変わってくるし,どういう道具を使うかによっても変わってくる。また,紙の厚さがどの程度かも関わってくる。)
- もう一度よく観察してみよう。
- 「膨らんでいる」
- どの程度膨らんでいるのだろうか。(せいぜい高さ1 - 2mm)
- この程度の膨らみで影響あるのだろうか。
- 実際に計算してみる。
- (それなりの解決)
数学教育的に面白いこと
- 概算
底面積が約50cm2であること。そのため,高さは約20cmと考えられることなど
- 整数値
底辺,底面積,高さ,四角錐部分の高さ,斜辺など
- 立体の観察
アタマの部分は四角錘。パックを開くための「折れ線」からの予想からは異なる。
- 近似
膨らみの計算
- 表面積の大きさ
表面積が大きいので,高さが1 - 2 mm であっても影響は大きい。
- 問題の関心事に応じた測定の厳密さ
「だいたい」を考えればいいのであれば,せいぜいものさしで「cm」単位程度ですむ。
しかし,「足りないのかもしれない」と思うは,より精確に測定したいと感じるようになる。すると,「何」で測るか,「どこ」を測るかなどが問題になってくる。
- 展開図
底面の部分は展開図は書けないが,アタマの部分はよくできている。
リソース
- 算数科教育の授業などでよく扱います。この素材そのものはあちこちで耳にしますが,「音」から出発する発問は,私独自の工夫ではないかと思っていますが,どうでしょう。
- 実際にパックを作っている会社等に問い合わせた方もいらっしゃるようで,その返答では,必ずしも,上記の問題およびその解決の中で出てくることを想定して作ったわけではないようです。設計等に携わっている方からのご意見が実際にうかがえると,いいですね。(期待しています。)