Date: Wed, 17 Feb 1999 17:25:05 +0900 From: Toshiaki Inukai Organization: Aichi University of Education Subject: レポート課題「数学教育におけるインターネットの活用について」 Sender: iijima-report-request@math-ntserver.auemath.aichi-edu.ac.jp 情報科学の犬飼です。 「数学教育におけるインターネットの活用について」の意見です。 引用符は、元の文章を私が短くまとめたものに対して付けています。 「●」は、見出しになっていたものです。 ●すべての学校が2001年度までにインターネット接続 現状で、コンピュータを利用した教育体制ができているとは思えないのに、 ネットワークをからめた授業が、まともにできるのかどうか疑問を感じる。 そもそも、きちんと教えられる人がいるのだろうか。 ●インターネット接続のための機器の低価格化 通信料金が固定制にならないと、家庭での本格的な利用は難しい。 また、電話回線による接続は、音声や動画を扱うには回線が細い。 ケーブルテレビによるインターネット接続に期待したい。 ●試験的なカリキュラム開発の支援 >インターネット利用のメリット: >・必要に応じて、研究の途中経過をオープンにできる 大学生のWebページでは、卒業研究のタイトルしか書いていなかったり、あるいは 「工事中」で、そのまま卒業してしまっているケースが多いのが残念である。 >・メーリングリストによる情報交換 メーリングリストの効果は、情報交換のみにとどまらず、「同じことをしている 人たちがいる」という、ある種の仲間意識が生まれることによって、やる気が出る というメリットもあると思う。 >・特別な資金を必要としない >・資料の公開、誰もがアクセスできる >・成果の参照、検索 >・距離の問題、時間的なずれを解消 これらについては、そのとおりだと思う。 特に、電子化による検索性と再利用性、さらに情報の新しさという点は、 大きなメリットである。 もちろん、更新していない情報は古くなるが、新しくする作業が容易に 行えるため、他のメディアに比べて新しい情報が得やすいことは確かである。 >・文書のみに制限されず、画像、音声を扱うことができる データ量が膨大になる問題はあるが、手順の多い説明をする際には、 動画を用いると効果的なことがある。 例えば、C++BuilderのCD-ROMには、ムービーによる説明が入っており、 マニュアルを読むだけよりも、はるかに分かりやすかった。 ●かけ算の問題 >かけ算をするだけのページと、道具がリンクした環境の違いは大きい 「道具がリンクした環境」は、自発的で積極的な学習をするのに大いに役立つ。 自分でどんどん調べて知識を深めていけるのが魅力である。 ただ、そういう生徒ばかりではないので、できる子とできない子の差が ますます激しくなる可能性はある。 ●GC/Win >DOS版とWindows版 以前にWindows版を使ってみたが、まず基本的な使い方が分からなかった。 >オンラインマニュアルには、使い方と練習問題がある マニュアルで調べようにも、量が膨大で、正直なところ読む気がしなかった。 詳しい人が実際に使っているのを見れば、すぐに分かるのかもしれないが。 ●ボランティア的な側面の不可欠さ >公的に便利な世界を構築する 個人が発信している情報で、よくここまで時間を割いて調べ上げ、惜しげもなく 公開しているものだと感心することがよくある。 どこからそんなサービス精神が生まれるのかと思うのだが、自分が情報発信する 立場になってみると、少し考え方が変わる。「今まで多くの方の情報に助けられて きたから、自分も人の役に立ちそうな情報を提供しよう」という気になるのだ。 この場合は、ボランティアよりギブ&テイクの精神と言えるのではないだろうか。 また、人とのコミュニケーションを楽しむためにやっている人もいるだろうし、 せっかく研究や調査をしたのだから公開しようと考える人もいるだろう。 このように動機はさまざまだが、結果として「公的に便利な世界」を構築している ことになる。 >自らの特徴を生かしながら、みんなが少しずつ労力を提供する >→ 全体としていいものを構築していく 関連サイトへのリンクが、これに当たる。 情報を提供する際に、すべてについて調べるよりは、うまく説明しているサイトを 見つけて、「この部分は、○○さんのページに詳しく載っています」とした方が 労力が減らせるし、自分は他の部分に力を入れることができる。 リンクが切れていると、そこで情報が途切れてしまうという問題も起こるが、 関連するページを多く載せることによって、ある程度は回避できる。 ●仕事としての認知の確立 >率先してやっている人が負担になっている → しかし評価されない さらに、トラブルの発生や、つまらない質問で振り回され、ますます負担に なるばかりという状況が目に浮かぶ。 そういえばNHKの番組で、コンピュータの管理は企業のシステムエンジニアに 任せているという学校を見たことがある。 >特殊な人々にしか配布されない論文と、WWW上での公開では、後者が「Publish」 ここで書かれているように、WWWの方は価値の判定が難しいが、WWW上での公開は 積極的に行われるべきだと思う。読めないことには評価のしようがないので。 ●組織的なプロジェクトの必要性 >論文発表会や学会誌などに掲載された論文等に関して、 >個人が自ら情報を公開することを支援するような施策 さらに、論文発表会や学会誌への投稿の際に、Webでの公開を承認させることに してしまえば、学会のサイトですべてを公開できることになる。 すると、今後は論文で用いた参考文献をURLで表すことができ、すぐに内容が読める ようになる。ぜひそうなってほしいのだが、金銭的な問題もあるのかもしれない。 電子情報通信学会での研究会発表の原稿の著作権は、学会側に帰属するとあった。 情報公開の妨げになっていると感じた。 -- 犬飼 敏章 愛知教育大学大学院 情報科学専修領域 M97051