GCマニュアル : 軌跡

3.「条件を満たす点の集合」としての「軌跡」


3.1 例

「条件を満たす集合」というのは,たとえば次のようなものを指します。


3.2 OHPシート作戦


 これらについて,Geometric Constructor などで調べる場合,特に変わった機能を使わ なくても調べることはできます。一つの発想としては,

すべてをソフトに頼るな

ということが挙げられるでしょう。たとえば,測定機能はソフトの内部にありますが,

ディスプレィ上の図を定規で測って何が悪い

とも言えます。もちろん,ディスプレィ上の図は多少歪んでいたりする可能性はあるわけ で,ある意味ではナンセンスですが,私達の目的が「CADを使った製図」のようなもの ではなく,「図形の問題について考えるという数学的探究」であることを考えると,

簡単な方法でとりあえずアバウトな結果を得て,概要を知る

というのは,目的に合わせて考えてみると,妥当なことです。それは一般に,ツール型の ソフトの利用全般についても一般化可能なことであり,つまり,

機能に関する学習は最低限にしたい
考える場面や作業内容として生徒にあったものを確保したい

ことが,授業で使うときには一つの原則となると思います。

 話を元に戻しますと,条件を満たす点の集合を調べるためには,

条件を満たす点の位置を画面上に「プロット」してしまえ

というのが,一つの手となるわけです。しかし,ディスプレィにマジックや鉛筆で書かれ たらたまらないですね。ですから,

ディスプレィにOHPシートを張りつけ,そこに書き込め

というのが,一つの手となるわけです。この手は,教育的には別の効果があります。つま り,

重ねてOHPで提示すると,何人分もの結果を「集約」することができる

ということです。

一人で調べるのは大変だけど,みんなの結果を集めたら,ここまで分かる

という「演出」ができるという意味でも,OHPシート「作戦」と呼ぶに値するでしょう 。(この方法は,川崎市内で開発・洗練されたものです。)


3.3 「一人」でするにはたまらない


しかし,この手は「授業向き」であっても,自分で調べるための方法としては,かなり 無理があります。特に教材研究等をする場合には,とりあえず,いろいろな可能性につい て調べ, その中から選択するわけで,一つの問題に対する概略的な結果は,

あまり考えなくても,作業が進められる

のでないと,疲れてしまいます。それを実現するための機能として,Geometric Construc tor での「条件を満たす点の集合」があります。


3.4 アイデアとしての「領域の境界」


この機能を理解する上で,補足になると思うので,追加しますが,OHP作戦の場合で も,たとえば,

「∠APB=60°となるときに点を取れ」

と言うと,ほとんど点を取ることができません。特に,測定の桁を小数点以下2位くらい まで表示していたら,生徒はそれにこだわって,「60.01°でもだめじゃないか」と 思ったりします。
 川崎で議論していたときに,こういうアイデアが出ました。

「60°以上のときに青い。以下の時に赤いを書かせよう」

(授業のときに実際に扱ったのは,別の事例)
これは二つの意味で面白いアイデアでした。


3.5 Geometric Constructor における「条件を満たす点の集合」の機能


Geometric Constructor での機能は,上記の作業を部分的に自動化したものです。基本 的には,

ある変数の符号の変化に応じて,動かしている点の軌跡を変える

というものです。
そのため,∠APB=60となる場合を調べるには,数式機能を使って,
「∠APB−60」 について調べることになります。


3.6 「条件を満たす点の集合」を調べる手順


 調べる手順は,次のようになります。
  1. 作図する。
  2. 測定する。必要があれば,数式を作り,その符号で判定可能にしておく。
  3. 「軌跡の設定」で「変数」を選択し,(2) の変数を選択する。
  4. F9のスイッチを確認。
  5. 変形してみる。

このとき,キーボードを使った場合には,等間隔に記号が並びますが,マウスの場合に は,もっと細かく調べたり,概略を調べられる反面,あまり綺麗にはなりません。
また,描画の最中に,画面が汚くなりますが,Esc キーを押すと,描き直しますから, あまり気にしないで,まずは変形をしましょう。
この機能を使う場合も,メモリに対する配慮は必要なので,「画面全体を調べよう」と いうようなことはやめ,大体調べたいところが分かったら,「シフト+F9」でクリアし ましょう。
 また,98,FMの場合には,F7キーで画面をフロッピィ等に保管し,あとでまとめ てハードコピーを取ることなどができます。


3.7 「条件を満たす点の集合」を調べる手順 - 円周角の定理を例として -