気がついたことの最初に,次のような気づきがありました。
この一番オープンな発問をするときというのは,多くの場合,
ということを主眼にしているのですが,この気づきは私にとってとても新鮮でした。
「他には...」
と聞きつつも,「この気づきをどう生かせるか」を考えてみたくなりました。
そこで,こう聞きました。
「こういう気づきを生徒がしたら,次にどうしますか。」
(いやな講師ですね。)
「それが正しいかどうかを確かめるにはどうしたらいいか」
という種類の発言もありましたが,
「長方形を変形したらどうなる」
という発言もありました。
私もそういう方向性を考えていました。つまり,
「外が長方形のときには,4つの三角形はどれも合同になります。
外の四角形が長方形でなくなると,4つの三角形について合同ではなくなるかもしれません。でも,別の秘密が成り立っているかもしれません。
では,それを調べてみましょう。
そうそう(しらじらしく?)どんな四角形について調べたらいいか分からないと,グループごとの作業ができませんよね。
長方形の他にどんな四角形について調べたらいいでしょう。」
こんな案が出ました。
「正方形,平行四辺形,ひし形,台形,等脚台形,一般の四角形」
そこで,グループを6つに分けて,調べてみました。
当初「合同にはならないな」というつぶやきがあったので,
「YesかNoかだけではつまらないので,Noだとしても,ちょっと違うことは成立するかもしれないし,Yesだとしても,もっと詳しいことが言えるかもしれないですよ」
と付け加えました。
私:「長方形では,4つの合同な三角形があったのですが,正方形ではどうでしたか。」
参加者:「4つの合同な二等辺三角形があります。」
私:「なるほど,二等辺という部分が詳しくなりますね。
「そうか,もっと詳しく言うこともできますね。」(この辺はアドリブ)
参加者:「直角二等辺三角形ですね。」
私:「はい,『正方形では,4つの合同な直角二等辺三角形がある』と言えることがわかりました。
「さて,正方形について,こう詳しい言い方をするとしたら,長方形の場合もちょっと言い換えた方がいいかもしれませんね。どう表現したらいいでしょう。」
参加者:「4つの合同な直角三角形がある」
私:「ひし形ではどうでしたか。」
参加者:「向かい合う二組の三角形が合同な二等辺三角形になります。」
私:「平行四辺形ではどうでしたか。」
参加者:「向かい合う二組の三角形が合同な三角形になります。」
私:「なるほど,そうですね。他の表現を考えた人はいませんか。」
参加者:「...」
私:「分かりました。では,それだけにしておきましょう。」
私:「等脚台形ではどうでしたか。」
参加者:「左右の二組の三角形が合同な三角形になります。」
私:「台形ではどうでしたか。」
参加者:「左右の二組の三角形の面積が等しくなります。」
私:「一般の場合はどうでしょう。これはなかなか難しいのですけど,何か関係はないでしょうか。」
参加者:「向かい合う三角形同士の面積を足したものは等しくなります。」
私:「そうですね。他にも何か関係はあるでしょうか。」
参加者:「...」
私:「では,観点を変えてききましょう。向かい合う三角形同士の面積は等しいというのだけど,それはどうしてですか。」
参加者:「対角線を引くと,大きな三角形の1/4ずつになるので,向かい合うのを加えると全体の1/4になるから。」
私:「そう。そこから,また新しいことが分かりますね。」
「(1)と(3)を加えると全体の1/4。
(2)と(4)を加えるとやはり全体の1/4。
だから...」
参加者:「そうか,全部を加えると,全体の1/2になるんだ。」
私:「そう,4つの三角形を加えると,全体の1/2になるということは,
講座でのこの問題の探究は,ここまでで終わりにし,一旦休憩し,次の話題へと進みました。
ここでの作業の結果を表にまとめてみると,こうなります。
外の四角形の形 | 4つの三角形にある関係 |
---|---|
正方形 | 合同な直角二等辺三角形が4つ |
長方形 | 合同な直角三角形が4つ |
ひし形 | 向かい合う2組の三角形が,合同な二等辺三角形 |
平行四辺形 | 向かい合う二組の三角形が合同な三角形 |
等脚台形 | 左右の2組の三角形が,合同な二等辺三角形 |
台形 | 2組の三角形が,面積の等しい三角形 |
凸四角形 | 向かい合う2組の三角形の面積の和が等しい |
もう少しうまく整理することは可能でしょうか。
関係/四角形 | 正方形 | 長方形 | ひし形 | 平行四辺形 | 等脚台形 | 台形 | 凸四角形 |
合同な直角二等辺三角形が4つ | ○ | ||||||
合同な直角三角形が4つ | ○ | ○ | |||||
向かい合う2組の三角形が,合同な二等辺三角形 | ○ | ○ | |||||
向かい合う2組の三角形が,合同な三角形 | ○ | ○ | ○ | ||||
左右の2組の三角形が,合同な二等辺三角形 | ○ | ○ | ○ | ○ | |||
2組の三角形が,面積の等しい三角形 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | |
向かい合う2組の三角形の面積の和が等しい | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
でも,なんかごちゃごちゃしていますね。
それらに対応するような「四角形を分類する観点」を考えてみると,
さて,どうしましょ。
...(続く)