愛知教育大学 数学教育講座 飯島: [GC Forum][GC ワールド][問題状況・探究]
[4角中点の探究]

4つの三角形の関係について考える


以下の探究は,1998.12.4に,四日市市立教育センターの講座の中で生まれたものです。

出発点

いくつかの話をした後で,次の図について,「どんなことに気づきますか」という発問をしました。

気がついたことの最初に,次のような気づきがありました。

三角形がすべて合同ですね。

この一番オープンな発問をするときというのは,多くの場合,

ということを主眼にしているのですが,この気づきは私にとってとても新鮮でした。
「他には...」
と聞きつつも,「この気づきをどう生かせるか」を考えてみたくなりました。
そこで,こう聞きました。
「こういう気づきを生徒がしたら,次にどうしますか。」
(いやな講師ですね。)

「それが正しいかどうかを確かめるにはどうしたらいいか」
という種類の発言もありましたが,
「長方形を変形したらどうなる」
という発言もありました。


発問

私もそういう方向性を考えていました。つまり,

「外が長方形のときには,4つの三角形はどれも合同になります。
外の四角形が長方形でなくなると,4つの三角形について合同ではなくなるかもしれません。でも,別の秘密が成り立っているかもしれません。
では,それを調べてみましょう。
そうそう(しらじらしく?)どんな四角形について調べたらいいか分からないと,グループごとの作業ができませんよね。
長方形の他にどんな四角形について調べたらいいでしょう。」

調べるべき四角形の種類

こんな案が出ました。
「正方形,平行四辺形,ひし形,台形,等脚台形,一般の四角形」
そこで,グループを6つに分けて,調べてみました。
当初「合同にはならないな」というつぶやきがあったので,
「YesかNoかだけではつまらないので,Noだとしても,ちょっと違うことは成立するかもしれないし,Yesだとしても,もっと詳しいことが言えるかもしれないですよ」
と付け加えました。


作業

作業は,案の定,「一般の四角形」グループが苦戦しました。どこに目をつけたらいいか,わからないからです。逆に,特殊な形になるほど,簡単に答えを出していました。
作業そのものの時間はせいぜい 5 分くらいだったでしょうか。10分はかからなかったと思います。(実は,作業の前まではプロジェクタの画面を眺めていたのだが,個別の作業をする上では, GC/Winのインストールが必要で,一旦中断して,GC/Winのインストールをみんなで行いました。2/3の方々は,Windowsソフトのインストールは初めてで,そういう練習も兼ねたわけです。)


発表と議論

さて,発表です。ここでは,ただ表にするよりも,順を追う方が雰囲気が分かると思うので,そうします。
発表は,なるべく特殊な方から始めました。

正方形

私:「長方形では,4つの合同な三角形があったのですが,正方形ではどうでしたか。」
参加者:「4つの合同な二等辺三角形があります。」
私:「なるほど,二等辺という部分が詳しくなりますね。
「そうか,もっと詳しく言うこともできますね。」(この辺はアドリブ)
参加者:「直角二等辺三角形ですね。」
私:「はい,『正方形では,4つの合同な直角二等辺三角形がある』と言えることがわかりました。
「さて,正方形について,こう詳しい言い方をするとしたら,長方形の場合もちょっと言い換えた方がいいかもしれませんね。どう表現したらいいでしょう。」
参加者:「4つの合同な直角三角形がある」

ひし形

私:「ひし形ではどうでしたか。」
参加者:「向かい合う二組の三角形が合同な二等辺三角形になります。」

平行四辺形

私:「平行四辺形ではどうでしたか。」
参加者:「向かい合う二組の三角形が合同な三角形になります。」
私:「なるほど,そうですね。他の表現を考えた人はいませんか。」
参加者:「...」
私:「分かりました。では,それだけにしておきましょう。」

等脚台形

私:「等脚台形ではどうでしたか。」
参加者:「左右の二組の三角形が合同な三角形になります。」

台形

私:「台形ではどうでしたか。」
参加者:「左右の二組の三角形の面積が等しくなります。」

一般の凸四角形

私:「一般の場合はどうでしょう。これはなかなか難しいのですけど,何か関係はないでしょうか。」
参加者:「向かい合う三角形同士の面積を足したものは等しくなります。」
私:「そうですね。他にも何か関係はあるでしょうか。」
参加者:「...」
私:「では,観点を変えてききましょう。向かい合う三角形同士の面積は等しいというのだけど,それはどうしてですか。」
参加者:「対角線を引くと,大きな三角形の1/4ずつになるので,向かい合うのを加えると全体の1/4になるから。」
私:「そう。そこから,また新しいことが分かりますね。」
「(1)と(3)を加えると全体の1/4。
(2)と(4)を加えるとやはり全体の1/4。
だから...」
参加者:「そうか,全部を加えると,全体の1/2になるんだ。」
私:「そう,4つの三角形を加えると,全体の1/2になるということは,

とも言えますね。
(「何か気がつくことはないか」という発問に対して,「中が外の面積の半分」という指摘があったので,)
このことは,前にありましたね。
参加者:「そうそう。」
私:「〇〇先生のおっしゃったことは,長方形のときだけではなく,どんな四角形についても言えることだったんですね。」

講座でのこの問題の探究は,ここまでで終わりにし,一旦休憩し,次の話題へと進みました。


結果を表にまとめてみると

ここでの作業の結果を表にまとめてみると,こうなります。

外の四角形の形4つの三角形にある関係
正方形合同な直角二等辺三角形が4つ
長方形合同な直角三角形が4つ
ひし形向かい合う2組の三角形が,合同な二等辺三角形
平行四辺形向かい合う二組の三角形が合同な三角形
等脚台形左右の2組の三角形が,合同な二等辺三角形
台形2組の三角形が,面積の等しい三角形
凸四角形向かい合う2組の三角形の面積の和が等しい

もう少しうまく整理することは可能でしょうか。


サバイバルゲームの観点で考えると

上記の表では,それぞれの図形に一番合った表現の性質を表しています。
特殊な図形から次第に一般化していく中で定理が生き残ったり,消滅したりする様子を表として観察すると,次のようになります。

関係/四角形正方形長方形ひし形平行四辺形等脚台形台形凸四角形
合同な直角二等辺三角形が4つ
合同な直角三角形が4つ
向かい合う2組の三角形が,合同な二等辺三角形
向かい合う2組の三角形が,合同な三角形
左右の2組の三角形が,合同な二等辺三角形
2組の三角形が,面積の等しい三角形
向かい合う2組の三角形の面積の和が等しい

でも,なんかごちゃごちゃしていますね。


うまく整理できないか

いくつかの観点に分けてみると

それらに対応するような「四角形を分類する観点」を考えてみると,

さて,どうしましょ。
...(続く)