飯島研究室[1993]
「Geometric Constructorを使った授業に関する共同研究と卒業研究」 ,イプシロン,愛知 教育大学数学教室,vol.35, 1993, 220-228

 Geometric Constructor を使った授業に関する共同研究と卒業研究

           愛知教育大学(飯島研究室)  飯島康之  ・大津正仁                            佐藤由起子 ・野口真里                            長谷川いち枝・森 一寿                            廣瀬義隆 0.はじめに  1992年度の飯島研究室の卒業研究では,Geometric Constructor(以下ではGCと省略する) を使 った授業等に関する研究を行った。ゼミ生だけで授業の構想・実施・検討を行うのは難しいが, GCを使った授業についての,附属名古屋中学校数学科等との共同研究があったため,そこでの授 業の観察や検討さらに分析に参加させていただいた。そこで,本稿では,本年度に行った共同研 究の様子と卒業研究の様子を報告する。 1.共同研究の経緯と卒業研究との関わり  Geometric Constructor を使った授業実践の蓄積は,これまで,上越教育大学附属中学校での 実践が中心であったが,1992年になり,より広範な授業の検討と実施を行うことになった。愛知 地区, 上越地区, 川崎地区そして北海道地区の4地区で行っている。上越地区では,上越教育大 学附属中学校を中心に,川崎地区では川崎市総合教育センター地曳善敬氏を中心に,北海道地区 では北海道教育大学岩見沢分校礒田正美氏, 札幌分校大久保和義氏とその研究グループで行って いる。  愛知地区では,附属名古屋中学校と豊田市立石野中学校で行った。 附属名古屋中学校での実践等は, 主に次のような日程で行った。 10/27    指導案検討会  11/18   玉置 崇氏による授業とその検討会(1) (2時間構成の授業)  11/25,26  玉置 崇氏による授業とその検討会(2) (2時間構成の授業)  12/4,8   八槇直幸氏による授業とその検討会  (2時間構成の授業) 1/22    鈴木良隆氏による授業とその検討会  2/    永井 聡氏による授業とその検討会  石野中学校堀部正嗣氏による実践等は,主に次のような日程で行った。以下の授業は,私達が 参加でき,VTR を収録できたもののみである。堀部氏自身は,この単元を通してGCを利用された ため,この前後でも数時間の実践を行っている。  10/2 三角形のしつきめの授業とその検討会 10/26 星型多角形の内角の和の授業とその検討会(1) 11/2 星型多角形の内角の和の授業とその検討会(2)  11/6 星型多角形の内角の和の授業(3) また,11/6には,教科教育センターで飯島が「コンピュータで数学の授業はどう変わるか−作 図ツールを用いた探究を目指して−」という名で発表したが,そのときにも玉置, 堀部両氏に参 加いただいた。堀部氏には主として11/6の授業の様子をVTR を使いながら報告していただき,ま た参加者の方々に検討していただいた。 10/27 〜11/5の10日間, 地曳善敬氏が研修にいらした。この期間中, 前述のように指導案検討 会, 石野中での授業の実施・参観・検討を実施できた。またそれ以外にも,ゼミ生との検討会, ミニティーチング, 学生に対する授業の実施と検討 (一斉指導と個別指導) などを行った。なお その後も, 川崎市白山中学校での実践結果,生徒の反応,父兄の意見やセンターでの研修会に参 加された小学校の先生方の意見等も交えながら,様々な研究成果をご報告いただいている。  このような共同研究があったため,ゼミにおける卒業研究でも,この機会をできるだけ生かす ことにした。指導案の検討会・授業の実施とその検討会等のあらゆる場面で,参加できる学生は 参加するようにした。さらに,授業実施前にミニティーチングを行って事前に検討したり,実施 後にVTRから授業のプロトコールを作成しその検討を行ったり,自分なりの観点で分析した。 大津,佐藤,野口の3名はそれぞれ玉置,八槇,堀部氏の授業を元にして卒業論文をまとめた。  また,長谷川,森の2名は,教材研究での成果を元にして,問題づくりの様相と軌跡の役割に ついてそれぞれまとめた。廣瀬は教材研究の際の教科書比較を元にして,図形を動かすことに注 目し,「2円と2直線」の問題に絞ってその成果をまとめた。以下では,それぞれの授業実践等 の概要と考察について簡単に述べることにする。              (飯島 康之) 2.卒業研究の概要 2.1 図形の関数的な見方と証明の関係 −「共通性」と「不可能性」の関図による追究− 従来の図形問題というのは、1つの問題に対して1つの図形で考えるものがほとんどであった。 しかし、その問題の中にはいろいろ条件を変えて考えてみること、即ちいろいろな場合を調べる ことでもっと気が付くことが出てくる。例えば、「平行四辺形ABCD」というのは、特定の四 角形のみを考えているわけではなく、集合の代表元である。ここでGCを使って集合のいろいろな 元について対応関係を調べてみるといろいろなことに気が付く。また、集合の外も調べてみると その定理の成立する限界が分かる。どの条件が有効なのでどうなるのか、その条件がなくなると どうなるのかがよく分かる。そのようなことを考えていこうとするものが「関図」である。  「関図」という概念は、平成3年度の山田修司氏の卒業論文の中で定義されている。その中で は、GCで図形のいろいろな場合を調べ、その結果をワークシートを使い明確にしている。それを 基に対応関係の証明について考察することが本論文の研究目的である。 そして、「関図」を授業で実践していただいた゚繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙 のが愛知教育大学附属名古屋中学校の玉置崇先生艨@                   である。この授業で扱った問題は、四角形のそれ艨@                   ぞれの角の二等分線を引いてその交点を結んだと艨@                   きにできる中の四角形はどうなるかというもので艨@                   ある。この四角形の角の二等分線の問題は、中に艨@                   できる四角形はすべて「円に内接する」という性艨@                   質を持つ。この性質に注目し、図形の関数的な見瘋繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙 方によって中の四角形の共通した性質を発見することができるかという「共通性の発見」と、対 応表の中に現れない四角形について考え、なぜその図形ができないかということを明らかにする 「不可能の証明」の2点を授業の目標として設定した。  「共通性の発見」については、GCを使っての活動中に数人の生徒が「円に内接する」ことに気 づいた。しかも、それはコンピュータの画面から得た直観的な情報であるために明確でないとし て、紙と鉛筆を使った証明を行うことで、その直観が正しいことを確認していた。しかしながら 大多数の生徒は、作成した対応表の中の外の四角形が長方形、平行四辺形、台形の場合について の演繹的な証明を行い、その証明の方法に着目して一般の四角形のときの証明をすることで「共 通性の発見」、及び理解をしていた。  「不可能の証明」については、GCを使った活動の前に「できる」図形の予想を行い、GCを使っ た活動の後にその結果と自分の予想とを比較し、「平行四辺形やひし形や台形がなぜできないん だろう」ということは意識できた。そして、「共通性の発見」の後の仕上げとして、平行四辺形 やひし形や台形は向かい合う角が180゜にならないので円に内接することはできないので、対 応表には現れてこないとすることができた。  今回の授業では「共通性の発見」、「不可能の証明」という活動を実現することができた。し かしそれは指導者側の意図的な指導がかなり必要であった。それなしには、生徒たちの中に「共 通性」や「不可能性」を意識させることは難しい。しかし今回の授業のような試みを続けて行け ばこのように従来の授業では扱うことのできなかったことでも行うことができるのである。                                     (大津 正仁) 2.2 生徒が意欲的に証明に取り組める授業を目指して 八槙先生が行った授業実践の課題は、「四角形ABCDの対角線を結んでできる4つの三角形 がある。その三角形の内心を結んでできる四角形はどうなるか」というものである。 私は、この授業を次の5つの観点から見ていくことにした。まず、(1) オープンな課題提示を すること,(2) 生徒に推測させること,(3) 生徒゚繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙 に調べさせることの3つが一般的な観点である。艨@                   それに、(4) この課題での教材の適切性の検討,艨@                   (5) 八槙先生が今回の授業でねらいとした「数学艨@                   的表現力を高めること」の2つの観点を加えた。艨@                   今回の授業が行われるに当たって、合計4回の艨@                   検討会が行われ、それに沿って指導案も4部作ら艨@                   れた。私は、これらを経過に沿って記録し、4部瘋繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙 の指導案がそれぞれどの様に変わっていったかを分析した。こうすることで、授業がどの様に構 成されたかを見ていったのである。そして、実際の授業をプロトコールで記録し、そこでの生徒 たちの様子を記した。また、今回の授業で自分がポイントになると思うところを取り上げ、それ らも自分なりに分析をした。  次に、先に述べた5つの観点から授業を考察した。「長方形をいろいろな四角形に変形すると 、内心を結んでできる四角形はどんな四角形になるでしょうか」というオープンな問題提示をし 、コンピュータでそれらを探究していく。そうすることで、どんな生徒も意欲的に問題に取り組 めたり、与えられた問題を発展させていくことができた。そして、「・・・・・ を証明せよ」という ように結果が示されているのでなく、どんな結果が出てくるのか推測することで証明するという 意欲をより高めることができる。その際コンピュータを使うと、その推測がよりスムーズに行わ れることがわかった。また、「生徒に調べさせる」という点では、うまく調べるために調べてい く方針を立てることが大切だということがわかった。内心という教材に関しては、今回の課題の 提示の仕方は、教科書にはないが、生徒たちは抵抗なく問題に取り組んでいた。数学的表現力に ついては「証明の良いところ」を考えさせるという活動が行われた。この場面では、なかなか生 徒の意見が出てこなかった。いろいろな図形に共通するところに目を向けるのは生徒にとって難 しいことがよくわかった。  コンピュータを使って証明の結果を推測し、それを証明するという授業の形態は、今までの授 業よりも生徒の活動が活発になるということがわかった。しかし、それにはいろんな要素がうま く働き合うことが大切なのだということを、今回の授業を通して実感した。 (佐藤 由紀子) 2.3 コンピュータを利用した星型5角形の効果的な指導のあり方について      −3回の授業の比較・検討に基づいて− 私は、堀部先生が行った3回の星型5角形の授業に基づいて研究した。星型5角形には、静的 な見方と動的な見方が考えられる。静的な見方をした場合、頂角の和が180度であることを証 明する学習がある。この時、多様な考え方が出てくる。普通の授業でも、これを生かして展開が なされている。一方、動的な見方をした場合、次の3つの良さがあると考えられる。(1) 5角形 を星型5角形に変形することにより、星型5角形に対する興味づけになる。(2) どんな5角形、 星型5角形でも角度の和が一定であるという性質に気づくことができる。(3) 動かす過程におい て自分で推測しながら考えることができる。それを受けて、この授業は次のような目標が設定さ れた。5角形を星型5角形に変形しながら内角の和が変わらないところを見つけることができる こと、星型5角形を変形しながら頂角の和を見つけることができること、星型5角形の頂角の和 が180度であることを説明できること(指導案より)である。 ゚繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙 瘋繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙  授業の分析をするにあたって、(1) 授業のねらい、(2) 授業の流れ・指導案との比較・プロト コール、(3) 検討会にて、(4) よい点・問題点、(5) 改善策、の5つを観点とした。3回の授業 を分析した後、比較をし、3回の授業で変えようとしたポイントとその評価について考察をした 。このような授業の分析を参考にして、コンピュータがうまく使われていた授業の特徴とそうで ない授業の問題点について考察し、コンピュータを使った授業における教師の教授行動でやった 方がよいこととやってはいけないことについて考えた。やった方がよいこととしてh目的・課題 を明確にしておく、i子どもの失敗や、活動を予想しておく、j一斉指導で教えておくことと、 個別指導で必要に応じて教えればよいことの区別をしておく、k時間配分(コンピュータを使う 時間、考える時間、発表する時間など)をきちんと考えておくの4つがあり、やってはいけない こととしてh子どもが考えるべきことを言ってはいけない、i目的がはっきりしないことをやら せてはいけない、j1度に2つ以上のことを要求してはいけない、k必要でないことをやらない 、lコンピュータの操作を長くしないの5つを挙げた。  今後の課題として、次のことを挙げた。今回、星型5角形で動的な見方ができるということが わかったので次は他の教材で動的な見方ができるものを探すことと、星型5角形の場合、静的な 見方と動的な見方の両方の良さを出すための工夫を見つけることである。   (野口 真里) 2.4 コンピュータを使った問題づくりの実際とその分析 問題づくりの活動は、「元の問題をよく理解すること」「新しい問題をつくること」「新しい 問題を解いたり吟味したりすること」の3段階に分けられ、知識そのものではなく知識を獲得す る活動であり、さまざまな教育的価値を含んでいる活動である。まず、教科書で「問題づくり」 が重要視されている問題を取り上げ、今までの道具(紙と鉛筆)を使った時の問題づくりの限界 を明らかにした。そこでは、「『言葉を変える』という問題の作り方には限界がある」ことなど が明らかとなった。そこで、コンピュータを「問題づくり」に役立てることができないか、紙と 鉛筆での限界や問題点を乗り越えることができないかと考えた。実際に筆者自身がコンピュータ を使って問題づくりに取り組んだ実例を元にし、「コンピュータを使うと問題づくりの活動がど う変わるのか」について、明らかにすることを本論文の研究課題とした。 そこで、「2つの正三角形の問題」「二等辺三゚繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙 角形の問題」のそれぞれを元に、コンピュータを艨@                   使って問題づくりに取り組んだ結果を記述し、分艨@                   析した。分析では、「この新しい問題に至った理艨@                   由」「紙と鉛筆での活動と比較したこと」「コン艨@                   ピュータの機能について」「コンピュータの利点艨@                   」「図形の捉え方」「できるようになったこと」艨@                   「そのような考えに至った理由」「面白さ」「大瘋繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙 切なこと」「注意すること」「期待できること」「問題づくりのよい点」などを挙げた。  そして、この分析を元に、4つの観点から考察を行った。第1に、問題づくりの思考と流れを 表にすることによって、今までとは異なった流れを見つけ出すことができた。紙と鉛筆では「問 題即証明」となっていたが、コンピュータが加わると、問題と証明の間に「コンピュータを使っ た探索・発見・予想」をする活動が加わり、図形と接する機会や新たな発見や自分で考える活動 が増えるということがいえる。第2に、コンピュータのそれぞれの機能に対し、問題づくりにお けるコンピュータの効果をまとめた。コンピュータを導入することによって、活動の幅が広がる ということがいえる。第3に、「紙と鉛筆」と「コンピュータ」での活動の比較を表にした。表 からは、「コンピュータを使うと紙と鉛筆ではできなかったことが可能になる」ことや、「紙と 鉛筆の問題点」に関しても、コンピュータを使うことによって解消の方向に向かっているという こと、しかし、紙と鉛筆の活動もコンピュータにない利点をもっていることが明らかになった。 活動の内容に合った、より有効な道具の選択や、それぞれの道具を組み合わせて効果的に問題づ くりを進めていくことが望ましい。第4に、「問題づくりの方法」をまとめた。紙と鉛筆だけの 時よりも、もっと簡単に、もっと自然に活動ができるようになった反面、自分で活動する難しさ もあることを述べた。問題づくりの鍵は、「方法」だけでなく、ちょっとした疑問や予想なども 含まれ、これらが問題づくりの原動力になっていることもいえる。最後に、今までの考察を元に 「コンピュータを使った問題づくりの指導のための留意点」をまとめた。  今後の課題としては、新しい道具(コンピュータ)を使った問題づくりの可能性を実践して確 かめることである。そのためには、適切な教材開発も必要となる。教師となって実践し、その答 えを出していきたい。                        (長谷川 いち枝) 2.5 新しい軌跡へのアプローチ −方程式での軌跡からの脱却− 「軌跡」というのが嫌いであった自分がコンピュータを使って軌跡を扱っているうちに、本当 は面白いものなんだと実感した事がこの研究をするきっかけである。さらに、軌跡の学習が削除 されてきているという現実を知り、軌跡について見直してみようと思ったのである。そして、こ の論文では、軌跡を見直すための一手段としてコンピュータを利用すると、軌跡の扱いがどのよ うに変わるのかという事を研究課題とした。  まずは現在の数学教育において軌跡がどのように扱われているかを考察するために現行の教科 書について調べた。そして軌跡があまり指導されていないという事を明らかにした。そこで、道 具が変われば軌跡の扱いも変わり、もっと指導されるのではないかと考えた。  次に、軌跡とは何であるべきかを考えたうえで、学校でやっている軌跡に対する不満として次 のこと挙げた。h軌跡を「動点」としてとらえることが少ない,i技術としての作図になってし まっている,j作図する機会が少ない。そして、これらのことを見直せば学校でやっている軌跡 がもう少し面白くなるのではないかと考えた。ここで軌跡を見直すための一手段としてコンピュ ータの利用を提案し、これが有効であるかについてh〜kを中心に考察してみた。  さらに次には、本当に有効であるのか検証するために自分でコンピュータを使って軌跡に関す る問題に取り組み、様々な事例を収集し検討してみた。そして、その事例の収集・検討を元にし てコンピュータを使っての軌跡のよさというものを4つ挙げることができた。1つ目として『点 の動きをみることができるというよさ』である。コンピュータを使うと点の集合が一連の動作か ら描かれることを実感しやすい。さらには点が上下運動をしながら軌跡を描いているものも見る ことができる。2つ目は『紙と鉛筆では作図できないような図も描けるというよさ』である。コ ンピュータを使うことによって手で作図しようとしても困難であったものが描けるようになり、 作図して考える機会が増える。また、新しい軌跡を発見させてくれる。3つ目は『新しい軌跡の 探究が可能になるというよさ』である。つまり、コンピュータを使うと軌跡を代数的に処理する 以外に軌跡について考えていけることが分かったのである。すなわち、h「予想→現象→証明」 という探究, i「観察(問題発見)→推定→証明」という探究, j「現象→証明」という探究 この様な3通りで軌跡を扱えたのである。そして4つ目として『問題の生成・発展が可能になる というよさ』である。コンピュータを使うと他の条件だと軌跡はどうなるかというように問題を 生成したり、様々に問題を発展させることなど新しい活動を支援できる。以上から、有効である ことを確かめることができ、さらに今までと違う軌跡を味わうことができたということを述べた。 今後の課題としては、自分以外の人がコンピュータを使って行った事例について考えること、 3つ目として挙げた3通りの探究に対応した教材、教授=学習過程について考察することが必要 である。              (森 一寿) 2.6 「2円と2直線」の問題に関するコンピュータを用いたよりよい指導を目指して  本研究のきっかけは,教科書を比較することから始まった。それぞれの教科書によって,指導 法や内容がどの様に違うのか調べてみようと思ったところからである。ただ漠然と教科書を比較 するのではなく,「2円と2直線」の問題に限定して研究を進めた。  教科書を比較していく中で,他の教科書とは全く異なる内容のものを見つけた。それは学校図 書の”動かして考えてみよう”であった。平面図形をコンピュータを用いて図を動かし,「気づ いたことを発表しよう。」というものであった。そこでコンピュータを用いたときとコンピュー タを用いないときで授業がどの様に変わるのかを調べることにした。 初めに,3社(啓林館, 教育出版,学校図書)の教科書で「2円と2直線」の問題がどの様に扱われているのかを問題形 式,2円の位置関係,解法する過程で用いる定理を中心に調べた。その結果,「2円と2直線」 の問題のほとんどが証明問題であることが分かった。2円の位置関係においては,内接するとき や,外接するときがない教科書があることが分かった。解法する過程で用いられる定理には,教 科書ごとでばらつきがみられ,この「2円と2直線」の問題で最も重要な3つの定理(円に内接 する四角形の性質,円周角の定理,接弦定理)についても扱い方の比重が教科書ごとで用いられ 方が違っていた。J             ゚繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙  そこで,コンピュータで図を動かすことにより艨@                   このような問題点をなくすことができないか調べ艨@                   るとともに,動かすことにより,生徒はどういう艨@                   ことに気づくのかを調べることにした。J   艨@                   動かし方は次の様にした。右の図の(1) 点Aを動艨@                   かす。(2) 円Oを動かす。(3) 円Oの大きさをか艨@                   える。J                  瘋繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙  その結果次のことが分かった。(1) では,例えば直線AC〓BDを証明しようとするとき3つ の定理(円に内接する四角形の性質,円周角の定理,接弦定理)について点Aを一周させたとき ,いずれの定理にも片寄ることなく学習することができる。また,(2) や(3) で円Oの大きさを 変えたり円Oを動かしたとき2円の位置関係がすべて学習することができる。また補助線の利用 も重要になってくる。このように動かすことは紙面上ではできない。動かすだけではなくコンピ ュータは数多くの図を短時間に描くことができる。それにより子どもの活動内容も増える。  最後にコンピュータを利用した授業案を作ってみた。ここでは証明にこだわらず,下位の子ど もも参加できる授業にすることを目標においた。 図で「点Aを動かしたとき,中にできる直線や図形の間にどんなことに気づくか。」と発問す る。この発問により,子どもは様々なことを発見する。これにより子どもの態度が受動的態度か ら能動的態度に変わる。また,発見した事柄を証明にこだわらずに画面で説明させることにより ,証明の苦手な子どもにも十分参加できる授業となるはずである。さらに辺の長さや角の大きさ を測定し画面に表示することによって新しい定理の発見や知識の再認識もできる。  今後の課題は,実際に授業を行い生徒の反応に基づいて再検討することである。(廣瀬義隆) 3.おわりに  今年度は,数多くの先生方のご協力によって,数多くの授業の立案・実施・検討に参加させて いただくことができた。どれも,これまでになかった授業である。立案においても,検討会にお いても,いろいろな意見が交わされ,とても楽しい経験をさせていただいた。授業化してみると どうなるだろうかという懸案の教材例について,それなりの見通しを与えていただいたと同時に, 数多くの新しい研究課題を示唆していただけたことは,私自身の研究にとっても,大きな財産に なった。また,様々な機会に,学生も参加させていただき,教育実習で見る現場とはまた違った 側面を教えていただけた。ある意味では身勝手なお願いを快く引き受けていただき,そして迎え ていただいた名古屋中の先生方,石野中の先生方に心よりお礼申し上げます。 (飯島 康之)                      注 1.授業の様子については, 明治図書『数学教育』において,93年1 月より「コンピュータで授業  を変えよう−作図ツールGeometric Constructor を使って−」という連載の中で述べている。   また,これまでのところ,関連する報告書等として,次のものがまとめられている。  堀部「生徒が主体的に取り組む図形学習−作図ツールGCを取り入れた角の指導を通して−」  地曳「コンピュータを用いた動的な図形教材の開発と指導−Geometric Constructor の研究」