数学教育研究,第8号,上越教育大学, 1993年

作図ツールを用いた探究例と問題例
− 今町先生と松沢先生の問題に関連して −
         愛知教育大学
          飯島康之

       0.はじめに

  Geometric Constructor を使った授業を現
在,上越地区(上越教育大学附属中学校,板
倉中学校),愛知地区(愛知教育大学附属名
古屋中学校,豊田市石野中学校),神奈川地
区(川崎市白山中学校),北海道地区(北海
道教育大学附属札幌中学校他)で実践してい
ただいている。
 Geometric Constructor のようなツール型
のソフトを授業で使う場合,教材開発に当た
って,教材の発展の可能性,そこに盛り込め
る活動の可能性等を検討を伴うが,まず教師
である私達自身がソフトを使った探究を実践
し,紙と鉛筆を使ったときの探究とどこが違
うのかを明らかにする必要がある。生徒の活
動を予想し,適切な学習過程を設計するため
には,いろいろな角度から検討することが必
要なため,私達自身がいろいろと面白い発見
を体験することが少なくない。
 今回の共同研究の中で,自分の探究の過程
,あるいは教材の中に盛り込もうとする過程
を明確に表現し,伝えることが,意外に難し
いことが明らかになってきた。逆に,他の人
が考えていることを理解することも,そう簡
単ではないことが分かってきた。一般の教材
の場合,それに関連する教材を扱った経験が
あったり,また似たような問題を扱った経験
があるため,意志の疎通が容易なのに比べる
と,ソフトを使った探究の場合,これまでの
教材の扱いとは異なる面が多いため,全く初
めてのことが多いことに起因するようだ。
 これらのことは,特にツール型のソフトを
利用していく場合,探究過程や教材をどのよ
うに表現し,記録していくか,そしてそのよ
うな記録を蓄積していくかが大きな課題であ
ることを示唆している。
 そこで本稿では,今回の共同研究の中で,
教材に関する検討を行った記録の中から2つ
を取り上げることにする。最初は,今町先生
(板倉中学校)から,提示された問題につい
て私自身が行った教材研究の過程をそのまま
の形で述べる。これは,私自身の探究過程を
翌日文章化したものである。もう一つは,松
沢先生(上越教育大学附属中学校)の問題に
関連して,いろいろと問題を考えてみた結果
を挙げる。この問題は,以前にいろいろと検
討し,松沢先生に提案したものであったため
,探究過程の記録ではなく,ある程度教材化
された形,探究を支援するための問題と,そ
れに対する解決案という形で提案した。こち
らは,Geometric Constructor の環境の中で
,「問題」あるいは「解決」を利用者が容易
に参照できるようになっている。
 両方とも,最終的な教材の形にはなってい
ない。もっとまとまった形式に整理すべきと
いうご批判もあるかと思う。しかし,今回は
,次の点を考慮し,できるだけ忠実な形のま
まにしておくことにする。
(1) ソフトを利用した探究過程をそのまま記
述したものは非常に少ない。また,あっても
短い探究過程のものがほとんどである。今町
先生の問題に関わる探究過程は,ある程度長
時間にわたる探究の記録の例として検討して
いただきたい。
(2) ソフトに関連した教材研究の過程を記録
したものもほとんどない。また,ソフトに適
した教材の在り方も未知の部分が多い。松沢
先生の問題に関する問題例を,一つの表現方
法として検討していただきたい。
(3) 最終的な授業に関しては,明治図書『数
学教育』に連載されるものを参照されたい。

  1.今町先生の問題に関する探究過程

 今町先生から提示された問題は,通常次の
ような形で与えられる問題であった。
゚繙問題1繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙
苺ス行四辺形ABCDの中に点Eをとる。
艪アのとき,J            
艫「EAB+ΔECD =ΔEBC +ΔEDA J   
            =□ABCDJ      
艪ニなることを証明せよ。J      
瘋繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙
゚繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙
艪O01               
艨@                 
艨@                 
艨@                 
艨@                 
艨@                 
艨@                 
瘋繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙
 図1 測定値の観察
  この問題は不変性が興味深いので,Eを動
点化することにより,まず次のような問題に
変えることができる。
゚繙問題2繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙
苺ス行四辺形ABCDの中に点Eをとり,EA, 
胼B,EC,EDを結ぶ。Eの位置をいろいろと
苺マえたときに,ΔEAB,ΔECD,ΔEBC,J 
艫「EDA Aの変化について観察せよ。J 
瘋繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙
  すると,発見するはずのこととして,
 水平に動かすと ΔEBC,ΔEDA は不変
         ΔEAB,ΔECD は逆に変化
 垂直に動かすと ΔEAB,ΔECD は不変
         ΔEBC,ΔEDA は逆に変化
 四角形の内部ならば
ΔEAB +ΔECD =ΔEBC +ΔEDA =□ABCD
 が考えられる。
゚繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙
艪O02               
艨@                 
艨@                 
艨@                 
艨@                 
艨@                 
艨@                 
瘋繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙
 図2 和が一定
  この問題2の発展として,次の問題3も当
然考えらる。
゚繙問題3繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙
苺ス行四辺形ABCDの中に点Eをとり,EA,EB,
胼C,ED を結ぶ。Eの位置を四角形の外部ま
艪ナ動かしたときにΔEAB,ΔECD,ΔEBC,ΔEDA 
艪フ変化について観察せよ。J      
瘋繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙
  この場合,Eの位置によって異なるが,
ΔEAB ±ΔECD,ΔEBC ±ΔEDA のなかのいず
れか二つが□ABCDになる。通常の授業の中
での問題の提示としては,問題3のように提
示する方法の他に,
゚繙問題4繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙
芬氓フ図において,          
艫「EAB+ΔECD =ΔEBC-ΔEDA =□ABCD
艪ニなることを証明せよ (図略) J   
瘋繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙
 あるいは,
゚繙問題5繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙
莓竭閧Pの点Eを図のような場所に変えた
艪ニき, やはり□ABCDとなる関係式を見
艪ツけ,それを証明せよ。J      
瘋繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙
 というような形になるのではないだろうか。
 さて,問題3を追究すると,成立する関係
式によって,領域を下図のように分割するこ
とができることが分かる。
゚繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙
艪O1.003J           
艨@                 
艨@                 
艨@                 
艨@                 
艨@                 
艨@                 
瘋繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙
差,差    和,差    差,差
繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙
差,和    和,和    差,和

繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙
差,差    和,差    差,差
 図3 領域への分割とその意味
  平行四辺形について一応の結果を得たので
,他のいろいろな四角形について調べてみる
ことにした。最初に調べたのは台形である。
次のような問題文が考えられる。
゚繙問題6繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙
腆D〓BCの台形ABCDの中に点Eをとり,EA,
胼B,EC,EDを結ぶ。Eの位置を四角形の外
苺狽ワで動かしたときにΔEAB,ΔECD, J
艫「EBC,ΔEDA の変化について観察せよ。
瘋繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙
  すると,
゚繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙
艪O2.001            
艨@                 
艨@                 
艨@                 
艨@                 
艨@                 
艨@                 
瘋繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙
 図4 台形の場合
 水平に動かす ΔEBC,ΔEDA は変わらない。
        ΔEAB+ΔECD,ΔEBC+ΔEDA 
                は変わらない。
 垂直に動かす すべて変化する
゚繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙
艪O2.002            
艨@                 
艨@                 
艨@                 
艨@                 
艨@                 
艨@                 
瘋繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙
 図5 補助線の追加
ということが分かる。そして,
  ΔEAB +ΔECD =ΔEBC +ΔEDA 
となるのは,ADとBCに平行で中間になる直線
上になる。例えば,ABとCDのそれぞれの中点
F,G を結んだ直線上ということになる。
 さらに,より一般の場合について調べてみ
ることにした。つまり,
゚繙問題7繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙
芬l角形ABCDの中に点Eをとり,EA,EB,EC,
胼Dを結ぶ。Eの位置を四角形の外部まで
苴ョかしたときにΔEAB,ΔECD,ΔEBC,J 
艫「EDAの変化について観察せよ。J 
瘋繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙
  予想としては,一般の四角形では,せいぜ
い一点のみで,この関係が成立するのではな
いかと思っていた。
゚繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙
艪O3.000            
艨@                 
艨@                 
艨@                 
艨@                 
艨@                 
艨@                 
瘋繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙
 図6 一般の四角形
 実際,台形のときの直線上でも等しくなく
なっている。これは台形のとき,縦に同様の
直線を作ってもその直線上ではうまくいかな
いことを考えると当然の結果であった。
゚繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙
艪O3.002            
艨@                 
艨@                 
艨@                 
艨@                 
艨@                 
艨@                 
瘋繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙
 図7 一般の四角形での横の直線
  そのため,次の問題は,この「一点」の発
見であった。つまり,
゚繙問題8繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙
芬l角形ABCDの中に点Eをとり,EA,EB,EC
胼Dを結ぶ。J            
艫「EAB +ΔECD =ΔEBC +ΔEDA J  
艪ニなるEの位置はどこかJ      
瘋繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙
  平行四辺形のときの結果と台形のときの結
果を踏まえると,
 平行四辺形 :四角形内部(平面)
 台形    :平行線の中間の直線(直線)
 一般の四角形:どこかの一点(?)
 という予想が立ち,これが包含関係になっ
ているとすれば,台形のときの直線のある一
点だろうと考えられた。
゚繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙
艪O3.004            
艨@                 
艨@                 
艨@                 
艨@                 
艨@                 
艨@                 
瘋繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙
 図8 2つの直線
 そのような直線は二つ考えられるのである
から,対辺の中点同士を結んだ直線の交点が
候補として考えられた。これはいわば四角形
の重心である。
 実際,測定値はその推測が正しいことを裏
付けている。
゚繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙
艪O3.005            
艨@                 
艨@                 
艨@                 
艨@                 
艨@                 
艨@                 
瘋繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙
 図9 二つの直線の交点での測定結果
  流れとしては,当然これを証明することと
なる。つまり,
゚繙問題9繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙
芬l角形ABCDのAB,BC,CD,DA の各中点をE,
腱,G,H とし,EGとFHの交点をM とする。
艪アのときJ             
艫「MAB +ΔMCD =ΔMBC +ΔMDA J  
艪ニなることを証明せよ。J      
瘋繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙
  しかし,5分ほど考えたが,分からなかった。
 あまり進展しないのと,測定結果からは明
らかそうに思えることなので,あまり動機づ
けにもならなかったため,もう少し調べてみ
ることの方を先にすることにした。つまり,
これらの関係の分布を調べることにした。
 平行四辺形のときには,
差,差    和,差    差,差
繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙
差,和    和,和    差,和

繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙
差,差    和,差    差,差
という分布があった。このときは三角形の和
と差のどちらが不変になるかという関係の追
究であったが,同様のことをΔMAB+ΔM
CDとΔMBC+ΔMDAの関係について調
べてみてはどうかと思った。四角形の内部の
みを考えると,平行四辺形の場合,

       一定


 図10 平行四辺形の場合
  となっている。台形の場合には,

      ΔMAB+ΔMCD>ΔMBC+ΔMDA 
繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙
      ΔMAB+ΔMCD<ΔMBC+ΔMDA 

  図11 台形の場合
直線上でΔMAB+ΔMCD=ΔMBC+ΔMDA 
となっている。
 同様のことを一般の四角形について考えて
みると,





  図12 一般の四角形の場合
  この4つの領域に適当に<>が分布し,た
だ一つの特別な点として,交点を捉えること
ができるのではないかと考えた。
 次の課題は,それを裏付けることである。
  しかし,実際にEをいろいろな点に動かし
てみると,どうも事情が違うのである。
ΔMAB +ΔMCD,ΔMBD +ΔMDA という二つの
数値を観察していると分かりにくいので,
ΔMAB +ΔMCD −ΔMBD −ΔMDA 
という数式を作り,その符号を観察しながら
調べることにしたのだが,領域によっては,
+,−がはっきりしているのだが,そうでな
いところもあるのである。これは予想外のこ
とであった。もし,+−が逆転しているのが
本当ならば,両者が等しい点も見つかってし
まうからだ。
゚繙問題10繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙
芬l角形ABCDの中に点Eをとり,EA,EB,EC,
胼Dを結ぶ。J            
艫「EAB +ΔECD =ΔEBC +ΔEDA J  
艪ニなるEはM以外にもあるらしい。J 
艪ヌこか。J             
瘋繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙
  その結果,次のような点を見つけた。
゚繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙
艪O3.006J           
艨@                 
艨@                 
艨@                 
艨@                 
艨@                 
艨@                 
瘋繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙
 図13 和が等しくなる点の発見(1)
゚繙問題11繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙
艪アの点はどのような点か。まだ他にもあ
艪驍フか。J             
瘋繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙
他にも見つかった。
゚繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙
艪O3.007J           
艨@                 
艨@                 
艨@                 
艨@                 
艨@                 
艨@                 
瘋繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙
 図14 和が等しくなる点の発見(2)
 この2点を通る直線上の点があやしい。近
似的でしかないのだが,両方の点に重なりそ
うな2つの点を新しく作り,それを通る直線
を作り,その直線上に重ねてみた。
  どうもこの直線上では両者が等しくなりそ
うである。
゚繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙
艪O3.008J           
艨@                 
艨@                 
艨@                 
艨@                 
艨@                 
艨@                 
瘋繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙
 図15 2つの点を通る直線
゚繙問題12繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙
艪アれはどんな直線なのかJ      
瘋繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙
 しかし,この直線の正体が分からない。な
にしろ,適当に調べていたら見つかったとい
う程度の点である。分かることは,重心を通
るらしい。ということだけだ。もう一点が見
つかればいい。頼りになるのは辺である。こ
の場合の辺の上の点に注目したが,
゚繙事実13繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙
芬l角形を変えるとこの辺の上は通らない
瘋繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙
ことが分かった。どうも考えても無駄のよう
だ。そこで直線の性質を考えてみた。
゚繙問題14繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙
芬l角形の面積を2等分する直線として特
苒・づけできないか。J        
瘋繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙
しかし,考えてみると,重心を通る直線はす
べて面積を2等分してしまうはずである。
何か手はないだろうか。そう,簡単な場合を
考えよう。
゚繙問題15繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙
芬翌ス問題はないか。J        
瘋繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙
四角形を三角形にしたらどうなのか。そこで
思い出したのは,松沢先生が上教大附属中の
本の中で扱っていた問題であった。つまり,

       A



       P

 B             C
 図16 松沢先生の問題
で,ΔPAB=ΔPBC=ΔPCAとなる点
Pの位置を求めようという問題である。三角
形の内部の場合はPは重心となるわけだが,
この中で,ΔPAB=ΔPBCという条件の
みを考えると,Pが中線上にあればいいこと
がわかる。
     A



      P

B     M       C
 図17 ΔPAB=ΔPBCとなる点
  これは使えないだろうか。台形にしてみた。





 図18 台形への一般化
〓枠01〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓
〓                                      〓
〓                                      〓
〓                                      〓
〓                                      〓
〓                                      〓
〓                                      〓
〓a           b 
〓                                      〓
〓図19    b     a    
〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓
  左右に等しい三角形を作ることはできそう
だ。平行でない場合には使えないだろうか。
のばして三角形にしたらどうだろう。
 太線部がまずあったとしたら,対辺の長さ
を元にして,底辺をb:aに分けておけば,
ここを通り,延長した直線の交点を通る直線
上にPをもっていけば両方の三角形は面積が
等しくなる。
 ここまで一般化したのは良かったのだが,
元の問題にかえって考えてみると,両方の和
を考えようとしているのだから,ここでは使
えないことが明らかになってしまった。
 どう生かせるかはまた後で考えることにし
て,中線を生かせないかどうかに絞って考え
ることにした。つまり,まず考えている四角
形の中で,同様の部分を考えると,








       M



 図20 中線
BDの中点Mを考えると,PがAM上にあれ
ば,ΔPAB=PADとなるのである。対角
線に対して反対側にある二つの三角形につい
ても同じだから,対角線の中点Mは,この関
係を満たす点の一つなのである。
 そして,半直線AM:ΔPAB=ΔPAD
     半直線CM:ΔPCB=ΔPCD
として,特徴づけることができ,両方を成立
させる点として,対角線の中点を特徴づける
ことができた。

゚繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙
艪O4.002            
艨@                 
艨@                 
艨@                 
艨@                 
艨@                 
艨@                 
瘋繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙
 図21 2つの中線と対角線の中点
 しかし,対角線は2つある。もう一つの対
角線ACとその中点Nを考えると,
     半直線BM:ΔPBA=ΔPDC
     半直線DM:ΔPDA=ΔPDC
として,特徴づけることができ,両方を成立
させる点として,対角線の中点を特徴づける
ことができた。
゚繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙
艪O4.003            
艨@                 
艨@                 
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艨@                 
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艨@                 
瘋繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙
 図22 2つの対角線の中点を結ぶ
  ここで,条件を満たす二つの点が見つかっ
た。これによって,候補となる直線を作るこ
とができたのである。
゚繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙
艪O4.004J           
艨@                 
艨@                 
艨@                 
艨@                 
艨@                 
艨@                 
瘋繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙
 図23  2点を通る直線
゚繙推測16繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙
苟ホ角線のそれぞれの中点をM,Nとする
艪ニき,直線MN上で成立するJ    
瘋繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙
 そこで,次のような図を作り,直線MN上
に点Pを制限してみたところ,この直線上で
は関係が成立することがほぼ裏付けられた。
゚繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙
艪O4.005J           
艨@                 
艨@                 
艨@                 
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艨@                 
瘋繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙
 図24 直線上の点を動かして確認
  証明することが次の課題のようにも思えた
が,その前に,特殊な図形のことを振り返っ
てみることにした。
゚繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙
艪O4.006J           
艨@                 
艨@                 
艨@                 
艨@                 
艨@                 
艨@                 
瘋繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙
 図25 台形の場合
゚繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙
艪O4.007J           
艨@                 
艨@                 
艨@                 
艨@                 
艨@                 
艨@                 
瘋繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙
 図26 平行四辺形の場合
 すると,台形の場合は,M,NがAD,B
Cに平行になるため,台形のときに注目して
いた直線はMNが特殊な位置になった場合で
あった。
 平行四辺形の場合は,M=Nとなってしま
う。そのため,MNを結ぶ直線はない。この
問題の場合は,「ない」というよりも,すべ
ての直線で成立すると考えた方がよいようだ。
 最後に,この証明を考えることにした。ま
ず,問題は,次のようになる。
゚繙問題17繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙
芬l角形ABCDの対角線のそれぞれの中点を
膊,N とするとき,直線MN上に点Eをとる。
胼A,EB,EC,ED を結ぶ。         
艫「EAB +ΔECD = ΔEBC +ΔEDA   J
艪ニなることを証明せよ。J      
瘋繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙
 難しいので,次の補助問題を考えた。
゚繙問題18繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙
莓竭17において,E=Mの場合について
苡リ明せよ。             
瘋繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙
  これは明らかだ。それぞれの三角形の面積
が等しいため,両者を加えたものは等しい。
゚繙問題19繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙
艪l,Nという2点の存在を使えないか。
瘋繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙


       M
         N




       M
         N


 図27 差引きは定数倍
  このときの差引きを考えると,左図の定数
倍として右の差し引きが考えられるため,一
般の場合にも証明できることが分かった。
  また,もう一つの考えとしては,任意の直
線上でのΔ+Δ−Δ−Δによって定義される
関数が一次関数になることが証明できれば証
明できそうなことが分かった。

 2.松沢先生の問題に関連する問題例

 松沢先生にお願いしたときには,「変換」
, 「移動」などを自然に扱える問題の探究が
できないかという提案をした。
  次の問題を考えてみよう。
゚繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙
艨レXOY の内部に点A があります。辺OX,O
膾 についてA と対象な点をそれぞれB,C 
艪ニします。∠XOY=25°のとき,∠BOC は
芍ス度になりますか。 (東書, 中1,p.148)
瘋繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙
 角度の計算だけでこの問題は解ける。図を
静的に分析すれば解ける。しかし,Geometri
c Constructor を使って図を動かすといろい
ろな追究が可能であり,その中で,自然に変
換や移動の概念を使う問題になる。それを,
次のような形で提案した。
繙繙繙繙繙繙問題1.DOC 繙繙繙繙繙
  ∠XOYと点Pがあります。今, OXに関して
Pと線対称な点をQとし,OYに関してQと線
対称な点をRとします。
  (1) Pを動かしてみましょう。
  どんなことに気がつきますか。
  (2) Yを動かしてみましょう。
  どんなことに気がつきますか。
  (3) Oを動かしてみましょう。
  どんなことに気がつきますか。
  自分なりの追究が終わったら,それぞれ,
解決11,解説12,解決13を見てください。
繙繙繙繙繙繙問題2.DOC 繙繙繙繙繙
  「松沢01.011」を選択していますか。
  さて,この図で,Pを動かしてみましょう
。どんなことに気がつきますか。
  特に,PとQの場合,QとRの場合は似てい
るのに,PとRでは異なってしまうことがあ
ると思うのですが,どうでしょう。
  自分なりの理由が見つかったら,「解決2」
を見てください。
繙繙繙繙繙繙問題3.DOC 繙繙繙繙繙
  Pを動かしたときの軌跡について,いくつ
かのことが今までに分かってきました。
  Pが上下,左右に動いたときの様子を知る
ことができました。しかし,それ以外のとき
のことは,まだよく分からないままです。
  そこで次のことについて調べてみましょう。
  (1) Pがある直線上を動くとき,Q,Rの軌
   跡はどうなるか。
  (2) Pがある円上を動くとき,Q,Rの軌跡
   はどうなるか。
  このそれぞれについて,「松沢01.041」と
「松沢01.051」で調べてみましょう。
  調べて自分なりの考えが持ててから,「解決
3」を読んでください。
繙繙繙繙繙解決11.DOC繙繙繙繙繙繙
  Pを動かしたときに気がつくこと。
  Pを動かしたときに,QとRの動きに注目
すると,面白いことが分かります。
  (1) Qの軌跡は,Pの軌跡と線対称になる。
    もっとも,これは当たり前ですね。
  (2) Rの軌跡は,Qの軌跡と線対称。
    これも当たり前ですね。
  (3) Rの軌跡は,Pの軌跡を回転したもの
   になる。
  どうしてでしょう。
  「松沢01.011」を見てください。
  そして,「問題2」を見てください。
繙繙繙繙繙解決12.DOC繙繙繙繙繙繙
  どんなことに気がつきましたか。次のこと
を見つけたのではないでしょうか。
  (1) Qの位置は変わらない。
  まあ,これは当たり前ですね。
  (2) Rの位置が円を描いているようだ。
  どうしてでしょう。
  解決11の場合と同様に,今度も,「松沢01
.011」を使って考えてみると分かりやすいと
思います。
繙繙繙繙繙解決13.DOC繙繙繙繙繙繙
  今度はどんなことに気づいたでしょう。
  まずOを横に動かした場合を考えましょう。
  このときは,
  (1) Qの位置は変わりません。
  (2) Rの位置は円を描いているようです。
  どんな円なのでしょうか。
  候補となるような円を自分なりに書き加え
て考えてみるといいと思います。
  「松沢01.021」を見てください。
  そして,解決14を見てください。
繙繙繙繙繙解決14.DOC繙繙繙繙繙繙
  どうですか。そう,Rの軌跡は,Yを中心
として,Rを通る円になっています。
  どうしてでしょう。まだ私には分かりませ
ん。きっと松沢先生が教えてくれると思いま
す。しかし,もしかしたら,3年生の知識を
使わないと無理なのかもしれません。
  さて,Oを上下に動かすと,どんなことが
起こるでしょうか。
  まず,「松沢01.002」に戻ってから調べて
みましょう。それから必要があれば,「松沢
01.021」を使っても構いません。
  自分なりの結果が出てから,「解決15」を見
てください。
繙繙繙繙繙解決15.DOC繙繙繙繙繙繙
  Qの軌跡の方は,どうも円になりそうです。
  どんな円でしょうか。補助線を入れて確か
めてみましょう。
  補助線の円を書き込んだ図は「松沢01.031
」に保存しています。
  さて,Rの方はどんな軌跡になるでしょう。
これは変わった曲線になりますね。私にもど
ういう性質を持つ曲線なのかは分かりません。
しかし,軌跡を精密に描くことにより,どん
な形の曲線になるかを知ることはできます。
繙繙繙繙繙繙解決2.DOC 繙繙繙繙繙
  次のことに気がつくのではないでしょうか。
  (1) ∠POQは変わる。
  (2) ∠QORも変わる。
  (3) なのに,∠PORは変わらない。
    もっと詳しく考えると,
  (4) ∠POR = 2 ∠XOY
  どういうことを意味しているのでしょう。
  一つの解釈は,こういうことです。つまり
, 点Pのみが動いているとき,X,O,Yは変わ
らないので,∠PORは一定。 つまり,Rは,
常に,PをOを中心に,2∠XOYだけ回転し
たことになっているわけです。
  もっと追究するためには,Pの位置をいろ
いろと変えてみてください。
繙繙繙繙繙繙解決3.DOC 繙繙繙繙繙
  どうでしょう。
 「松沢01.041」では,直線上をPを動かして
みると,軌跡としての直線が3つできたので
はないでしょうか。
  これらはどんな関係にあるのでしょう。
 「松沢01.051」では,円上をPを動かしてみ
ると,軌跡としての円が3つできたのではな
いでしょうか。
  これらはどんな関係にあるのでしょう。
  また,I,Jという点で,直線や円が決まっ
ていますから,これらの点を動かすことによ
って,元になっている直線や円を変化させ,
やはり変わったことが起こるかどうか調べて
みましょう。
  動かし方がよく分からないときには,「松
沢01.042」や「松沢01.052」を使ってみてく
ださい。
繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙繙