*0.この授業全体に関して **0.1 主な授業のねらいなど -シラバスにも掲載しているように,「図形を中心的な素材として,コンピュータ・ネットワークを利用した教材研究・授業設計/研究の方法を習得することを目的としています。 -毎回,一定量の課題を解決しながら,最終的に自分なりの指導案を作成し,発表することに取りくんできました。 **0.2 背景(1) -授業担当者自身が開発したGC/html5は,図形の動的探究を支援するために開発したソフトですが,これまで30年以上にわたって,さまざまな授業研究等が国内各地で行われてきましたし。 -これまでも教師用デジタル教科書等でも利用されてきましたが,R7からの教科書では,QRコンテンツと言って,教科書のQRコードから直接利用できる形で使われるようになります。 -また,附属名古屋中学校などでの研究授業などの授業実践に関するリソースもあります。それらも活用しながら,「コンピュータ・ネットワークを利用した教材研究・授業設計/研究の方法の習得」に焦点を当てる授業です。 -教材研究や授業設計等をするには,かなりの時間も要することなどから,図形に焦点を当てて取りくんできました。 --@https://www.shinko-keirin.co.jp/keirinkan/chu_r7/math/feature/qr.html,啓林館のQRコンテンツ(動かす) **0.3 背景(2) -実際,学校教育の現場では,GIGAスクール構想の実現等に伴い,ICT活用に関することは,ここ数年で大きな変革期を迎えています。 -ICT利用に関して,さまざまな側面が増えてきていることもまた,事実です。 -一方,大学の学部の授業においては,デジタル教科書にしろ,GIGA端末の背景にあるクラウドシステムを提供することなどもできず,「学校と同じ環境」を提供することはむずかしいですが,逆に実際の学校での変化は激しいので,みなさんが就職する段階での「標準」を提供することはそもそも無理だともいえます。 **0.4 普遍的に通用するはずの「デジタルと数学教育とのつきあい方・考え方」 -学部で学ぶべきこととして,生涯にわたって通用するはずのことに焦点を当てるとしたら,今の状況も踏まえながら,冒頭に上げた次のことは,「デジタルと数学教育とのつきあい方・考え方」につながると思っています。 --「図形を中心的な素材として,コンピュータ・ネットワークを利用した教材研究・授業設計/研究の方法を習得すること」 **0.5 背景(3) -私自身,今年度が,この大学で教える最後の年度になります。 -それはまた,「こういうスタイルでGC関連あるいは動的幾何ソフトに焦点を当てた実践的な学部の授業」を包括的に行う授業に私が取り組む最後の年度でもあります。 -一方,R7以降,GCあるいは動的幾何ソフトの教育利用は,より一般的なものに変わっていくことが想定される中で,「この授業のため」だけでなく,「より多くの人々にも利用可能な教育リソースを開発しながら」進めていくことを想定したいと思っています。 -具体的にいえば,この授業の中で「みなさんにわかっていただきたい」と思っている内容や,授業の中では必ずしも扱えないことに関して,動画コンテンツを開発し,提供しながら,進めてみたいと思っています。 **0.6 内容や,評価方法は,今後の状況に合わせて変えていく可能性があります。 -そこで,みなさんの様子を踏まえながら,扱う内容や,特に最終的な評価の方法に関して,テスト等の併用なども含めて検討していく可能性があります。ご了解ください。 **0.7 「この授業の教科書」について - この授業において,次の本は「教科書」として扱っていきますので,生協等で購入してください。 -- 飯島, 「ICTで変わる数学的探究」,明治図書,2021 -- 生協での購入がむずかしい場合は,同価格で,直接提供することも可能です。 - また,中学校,高等学校の学習指導要領解説に関しては,他の授業でも利用してきたと思いますが,同様に,教科書として扱いますから,入手しておいてください。 **0.8 「中学校や高校の教科書」について - この授業において,教材を探す等の課題に際して,中高の教科書等があることが望ましいです。 - この「望ましい」というのは,「なくてもいい」という意味ではありません。「現行の中高の教科書を使うことが標準」だが,「過去,自分が使った教科書等でもかまわない」し,それと同様に,教材研究等を行える別の資料でもかまわない。ただし,「同等程度以上の取り組みを行えること」が大切です。 **0.9 参考書として - 附属名古屋中学校の先生方の取り組みを,次の本にまとめて,明治図書から刊行しました。 --ICT活用を位置づけた中学校数学の授業モデル 1年 --ICT活用を位置づけた中学校数学の授業モデル 2年 --ICT活用を位置づけた中学校数学の授業モデル 3年 - 中学校数学科での,いろいろな意味でのICT活用の様子を把握する上では,かなりいい本に仕上がりました。これは,教科書として扱うわけではありませんが,それに準拠する形で扱いますし,またみなさんが,他の実践についても参考にするのに適している本だと思います。 -一定数は,生協にもおいていただきました。また,生協での購入がむずかしい場合には,やはり,同科価格で直接提供することも可能です。 -また,GCに関して,過去にまとめた3つの書籍は,図書館にあるので,参考にしてください。 -それ以外に,各種論文等web経由でアクセス可能なものも多数ありますし,私のサイトにもいろいろなリソースがあります。利用してください。 **0.10 さまざまな「リソース」とさまざまな「学び」 - 「一定のまとまりを持った参照可能なリソース」としての本 -- 「それを輪読する」ような授業はしない。 - web(これ) -- 毎週,この授業のためにつくるハイパーテキスト -- 今後は授業での活動等を想定してまとめたものになるはず。 -- 教科書のようなまとまり感はないかもしれない。 -- PCはGCを使った作業等になるはずだから,紙で印刷して配布する。 - web(GC/html5) -- 文字通り「図形を動かして調べる活動」のためのソフト - web(まなびネット) -- (1) 出席代わり -- (2) フォーラム (情報共有をしてほしい) -- (3) 課題(wordのファイル等の提出) - 対面にて -- 模擬授業(このメンバーでどういう授業ができるのかを実感しながら,「授業とは集団でつくるもの」そして,教師はそれをナビゲートするものということを体験) -- 「授業に生徒として参加する」ことや,「そういう生徒の活動を生かす」ことなども学んでほしい --- かなりの確率で,「自分で勝手に習得していくべきもの」という感覚に染まっているかもしれない。 -- そういう中での「学び」とはなにかを学んでほしい。 -- 「全体での発言や議論」- マイク回します。 -- グループ活動- 今までの経験では,「ここ」ではやりにくい -- となりの人たちと勝手に「学ぶ」ことは推奨します。 --- 別のことをしていると思ったら,.....注意の対象だろうけど。 **0.11 「それぞれの得意」が違うはず - 異なる学生集団が集まっています。 -- 高校数学 / きっと,数学が好き。そして得意。 -- ICT / ICTの効果的な使い方とか,ICTに関する基礎・基本など。 -- 学校教育 / 「教育学」などの観点から見た「学び」とは,など。 -- 過年度生 / 3年生とは少し違う「経験」や「個性」を持っています。 - 「何かが足りない」のではなく,「自分のいいところ」を発揮できる「授業」にしたい。 - 比較的人数が少ない -- みなさんに活躍していただけるチャンスを増やしていこうと思います。 **0.12 「こういう方には単位は認められない」 - 最終レポート(指導案等)を提出していないなど,重要な提出物が提出されない。 - 「他の人と情報共有し,議論等をするための提出物」などが,期限までに提出されない。 - この授業では,「授業のビデオ」等を扱うことがあります。この授業の教育目的等を踏まえて撮影等を行って利用しています。当初の目的以外にそれを利用するなど,明らかに問題と思われる行為が発生したときは,授業への参加も禁止する等の措置をとることもありえます。(今までそんなことをする人はいませんでしたが) **0.13 特別な事情等がある場合は,できるだけ事前に了解をとってください。 - 特にコロナ禍以降,いろいろなケースが発生しています。 - できるだけ対応して,みなさんが「学ぶ権利」は守っていきたいと思います。 - 緊急性がある場合は,もちろん事後でもかまいませんが,事前に相談・連絡できる場合は,できるだけ「事前に」お願いします。 **0.14 授業の撮影と利用について - ここ数年,この授業は撮影・編集して,受講者の方のリソースとして使ってきました。 - たとえば,コロナ関連で受講できない場合に,「出席の代替とすることはできない」けれども,「学びのリソース」として使うことを想定してきました。 -- 実際,体調が悪く,自身のため,あるいは他者に感染させてしまうリスクを感じたとしたら,「対面での出席はしない」というのも大切なことだと思うのです。 -- あるいは,その後のレポート作成等をする上で,「よくわからなかった」授業に関して「見直すことができる」のも大切なことだと思うのです。 - 一方,このような授業は,「今年度しかできない」ことを考えると,GCに関することを学びたいと思う教育関係者などに,その映像をリソースとして利用することも許容していただきたいと思っています。 -- もちろん,異論がある場合には,そういう使い方はしませんし,撮影に異論がある場合には,その方法等についても協議しましょう。 *1.数学教育にとってのICT **1.1 これまでの「教育の情報化」 - これまで, 約10年おきくらいに, いろいろなことが変わってきました。 - 少し前までは, 電子黒板, (教師用)デジタル教科書 - ここ10年くらいは, タブレットの導入 - この授業では, 特に 「グループ学習の中で, 4人で1台のiPad(上でのGC)」を使った学び, に焦点を当ててきました。 - 標語的には, 「society 5.0」が次の段階として, いろいろなところで議論されていたと思います。 - しかし, ここ数年の新型コロナウィルス問題で, 一気に, オンライン教育の課題が生まれてきました。 - GIGAスクール構想のプロジェクトも前倒しされ, 関連する様々な施策も, その性格も内容も大きく変わりつつあります。 **1.2 「数学は, ペーパーテストで, 限られた時間で正しい答えをかくためのやり方を学ぶ教科」なのか? - 以前, こんな発言がよくありました。 -- 「私の学校(高校)は, 進学校なので, コンピュータを使う授業はしません」 - もし, 「受験のための数学」を考えるなら, ある意味で, その先生の気持ちはわかると思います。 - でも, そういうことなんでしょうか。 **1.3 簡単に答えを出すための道具がICTと思うと, ... - 「ボタンを押したら答えを出す」のが, コンピュータ/ソフト だとしたら, ...数学なんて学ぶ必要ないね。 **1.4 この授業の中で考えたいキーワード例 -「主体・対話的で深い学び」 -「わかりやすい授業」 -「知識・技能」 -「思考力・表現力・判断力」 -「個に応じる指導」 -「言語活動」 -「観察・実験」 -「レポート作成」 -「問題の発見」 ** 1.5 この授業の中で実感してほしいこと ***1.5.1 数学の問題解決の道具としてのコンピュータ - この授業では, 主に, 動的幾何ソフトとしての GC/html5 を使います - 他にも, 関数グラフツールとしてのGrapesや, 表計算ソフトとしてのExcel, 数式処理ソフトとしてのmathematicaや, 動的幾何ソフトをより汎用化したソフトとしての GeoGebra などがあります。 - それらは, 「素早く答えを出す」というだけの貢献をしてくれます。 - それをまず, 出発点として体験してください。 ***1.5.2 授業の道具(教具)としてのコンピュータ - これまでは, 主に,次のことを想定していました。 -- 普通教室にあるプロジェクタ(電子黒板)とそれに接続してあるコンピュータ -- コンピュータ室などでの「一人一台」 -- 普通教室などでも「4人一台」 - しかし, これからは, 遠隔教育での可能性も考慮することが必要だと思います。 **1.6 この授業の中で扱うこと -「図形を動かす」と何がどう変わるのか。 -それを踏まえると, 教材(の意味)はどう変わるのか。 -どんな教育目標を実現可能になるのか。→教材開発,授業設計,カリキュラムデザイン -実際の授業を(みる/分析する/議論する/資料化する...) -教材やレポートを作る(オフラインで作り,オンラインで発表/共有化/議論...) -発表(プレゼン)の練習も -授業そのもので扱っていること/行っていることがいろいろな意味で「実験」 -プラス/マイナスの可能性/危険性を実感してください。 - さらに, 「今の時代」を踏まえて追加することもあると思います。 **1.7 具体例から(1) #00001-test - 図をクリックしてみて, 緑の点を動かしてみてください。 - どんなことを観察することができますか。 *** 「動かすこと」の意味は,そう簡単ではない。 - きっと最初は,「あ,こういう使い方ね。分かりやすい解説するための道具なのね」と思うでしょう。 - 教科書の「QRコンテンツ」のねらいは,基本的にはそういうことでもあります。 - つまり,「どんな先生が使っても,あるいはどんな生徒が使っても,ほぼ同じような使い方・効果がある」ものでありたいということです。 - でも,GCあるいはその他の動的幾何ソフトが,実践でも研究でも「生き続けている」理由は,「簡単なことのようにみえて,実は奥が深い」からなのです。 - 一般的に,ICT活用には似たような側面がいたるところにあります。 -- 単に便利になるというだけのことではない。 **1.8 具体例から(2) - webで検索をして, Grapes というソフトをダウンロードしてみてください。 - y = ax
2
+bx+c という関数をつくり, 3つのパラメータを変化させることを考えたいと思います。 - 3つのパラメータの中の1つずつを選択して動かしたとき, グラフはどんな動きをするか予想してください。 - 実際に観察してみましょう。 - どんなことがわかりますか? **1.9 上記のそれぞれから, どんな数学的活動, あるいはそれを引き出すための発問や, 授業がイメージできますか -そういうことをもとに, この授業は組み立てていきます。 *2.「教科書」の序章(introduction)と,コロナ・GIGAなどのこと **2.1 「失われた30年」と言われる時代,教育でのICT利用は「変わらなさすぎた」と私は感じる。 - GCなど,動的幾何ソフトが開発されたのは,1980年代末や1990年あたりです。 - 世界的にも,いろいろなソフトが生まれ,研究が生まれ,定番になっていきました。 - 世界的には,注目されたソフトも世代交代等がありました。(今一番元気なのは,GeoGebraでしょう) - でも,みなさんの中学生生活・高校生活で, それらは,決して「当たり前になっていなかった」のではないでしょうか。 - casioやsharpは電卓で世界をリードする企業でした。関数電卓等も開発しました。でも,学校教育の中でまともに使われないままでいる中で,TIが市場を制覇し,そして日本市場は無視されるようにさえなりました。 **2.2 コロナ禍で,世界の変化は加速されました。 - コンピュータの性能も,zoomなどに象徴されるソフトの開発・普及も,そしてAIの研究開発は加速され,生成AIの進展には文字通り日進月歩です。 - 産業革命はまちがいなく進んでいます。 **2.3 GIGAとともに,「一気」に変わりつつある。 - GIGAは「一人一台のタブレット」ということを意味するだけではありません。 - 自治体によって,さまざまな温度差はありますが,時間とともに,さまざまなことが変化しています。 - ただ,本学などのキャンパスの中ではそれをあまり感じにくいですが。 - たとえば,去年の夏の段階では,「定期テスト採点支援システム」はあまり話題になっていませんでしたが,秋にはいろいろなところで「実際に使い,定着しはじめた」段階になっていました。 - GIGAの初期ではタブレットはあっても,オンライン授業もできないし,教科書も変わりませんでしたが,R6/7から小中学校の教科書が一新されQRコンテンツ等が当たり前になっていきます。 **2.4 学習指導要領はそう簡単には変わらないけど - 現行の学習指導要領は,GIGAを前提に作られたわけではありません。 - 教科書もそんなに簡単に大枠が変わることはありません。 - それでも,いくつかの「実現したかったはずのこと」を実現しやすくなっています。 **2.5 「習得」あるいは,「受け身的な学び」を支援するシステムとしてのICTはすぐに実用化されていくけれど - へたをすると,「算数・数学なんて,個別に学べばいいじゃないか」となりかねないリスクがあります。 - 社会の多くの人々にとっては,「一定の範囲のテストが解けるようになれば,それでいい」というものが数学かもしれません。「動画で分かりやすい解説」を見て,時間節約をしてさっさとクリアするだけでいいのが「数学の学び」と思われているかもしれません。 **2.6 「活用」や「探究」は,... - そういうところは,「みなさんにとってはわかっていただきたいターゲット」なのですけど。 - それをわかってもらうためのキーワードが,この授業でねらいとしているものだったりするのです。 *3. 課題 - 学びネットのフォーラムとして,次のことを掲載しますから,次回までに書き込みをしてください。 -(1) 数学教育あるいは学校教育全般にとって,ICTが与える影響について,次のいずれかの点について書き込みをしてください。 -- a. 自分が生徒として体験した「よかったこと」あるいは「よくないと思ったこと」 -- b. GIGA以降の教育現場の変化に関して体験したり,感じた「これはいい」「こういうことは避けたい」と思ったこと -- c. いずれ,教育現場で,「こういうことを実現するための道具としてICT等を活用したい」という期待 -- d. 将来の自分のために,「こういう力をつけたい」と感じていることと,「この授業で扱ってほしい」こと -(2) 今日の授業の感想(今後毎回) / 次の観点の一つあるいは複数について書きなさい。 -- a.新しく学んだと実感したこと(数学,教育, ICT活用,...) -- b.もっと深く学びたいと思ったこと(同上) -- c.あなたが受けるの授業として「よかった」「続けてほしい」と思ったこと -- d.「よくなかった」「改善してほしい」と思ったこと -- e.その他