*0.はじめに **0.1 明日,名古屋中でGC活用研究会で研究授業を実施します。 -みなさんは授業があるので参加できないでしょうけど,もし空き時間があり,オンラインで参加希望の方は,ぜひ。 --@https://www.nj.aichi-edu.ac.jp/wp-content/uploads/sites/2/2022/11/b555bf5fef43e8f52a942dcab5ad7f3f.pdf, こちらのp.2 -今回は「実験」を扱う内容なので,「ここで模擬授業」はちょっとむずかしいのですけど...。 **0.2 みなさんの「軌跡についての探究」について -「重心の軌跡」が多いですね。 --なんとなく,「これだけ人数がいるのだから,もっとバリエーションがあっていい」と思うんだけど。 -「条件を満たす点の集合」を扱っている人もいますね。 --今日の話題を扱ってみると,「あ,勘違い」というのは,お分かりかと思います。 -「軌跡が妙な曲線になる」ケースもありますよね。 --それは,ある意味で,決して悪いことではないです。 --つまり,それは「その問題はそのままでは学校数学では扱えない」けれども,「扱えないということが,実験で確かめることができる」ことを体験できたわけです。 --過去においては,「それは無理だよ」としかいえなかったり,「扱えるものしか扱わない」ことしかできなかったけど,「試しに実験してみようか」が可能で,「これは今は扱えないね」という扱い方ができるわけです。 -「円の一部」というようなケースもありましたね。 --「円すべてにならない」ようなケースって,たくさんあるのでしょうか。 -放物線などの二次曲線になる場合もありますね。 --それらを扱うとしたら,「証明」としてどういう方法が適切なのか,教材化にはそれも必要になってきますね。 *1.軌跡(2) *1. 「条件を満たす点の集合」としての軌跡 **1.1 教科書等での「軌跡」=「条件を満たす点の集合」 *** 高校の教科書での定義の例 -平面上で,与えられた条件を満たす点全体の集合が作る図形を,この条件を満たす点の
軌跡
という。 -- 例 ---円 ---垂直二等分線 ---角の二等分線 -本当は,上記の定義は,well-definedではない。 --「三角形の内部」は,該当するのだろうか。 --平面に含まれる点全体の集合は,条件のはずだが,妥当なのだろうか。 --「x,y座標が整数になっている点」の集合は妥当なのだろうか。 --「x,y座標が有理数になっている点」の集合は妥当なのだろうか。 --つまり,一般的には,「その集合が,1次元的な広がりを持っている」集合であることを,暗黙のうちに想定しています。 -現実的には -- 「証明」や「計算が実行可能な対象」でもあることから,学校数学では,ほぼ次のものを想定しています。 --- 直線 --- 円 --- 二次曲線(楕円,放物線,双曲線) --- 特定の曲線(パラメータ表示等で記述されるもの)→これらはどちらかというと,「動いた点の跡」として生成されるけれども,式表現ができるので,条件を満たす点の集合としても記述できるという側面が強い。 **1.2 「GC」の中での軌跡は二つの側面 - 「動いた跡」としての軌跡 -
「条件を満たす点の集合」としての軌跡
--今日は,こちらです。また,多くの動的幾何ソフトにおいても,この2種類はほぼあると思ってよいでしょう。 *2. GCにおける「条件を満たす点の集合」としての軌跡とその拡張 ** 2.1 仕様 - 「点」の「編集」において,「軌跡の色」を設定することが「準備」 - すると「記録」ボタンが表示される。 - 「条件を満たす」場所において,「記録」ボタンを押す - これを繰り返すことで,「条件を満たす点」が増えていく。 - 「どこに条件を満たす点がありそうか」を推測したり,「どう調べていくか」の方針を考えたり,一定の数の点が集まったときに,「どういう点の集合なのか」を考えるところに,数学的活動が生まれる *** 余談 - 「軌跡を残したまま動かす」と,その「ウロウロした様子そのもの」すべてが記録されてしまいます。 - それをきちんとできる場合は,「動かし方がわかっている場合」です。 - そういう動かし方がわからないときには,「合致したときだけ記録を残せばいい」と割り切ると,「ポツポツとした点を次第に残していくので,時間がかかる」使い方になります。 - でも逆にいえば,「動く跡としての軌跡」は「ササッと作成できる」のに対して,「条件を満たす点の集合」は,「判断しながら,少しずつ作っていく」ことが,生徒の活動そのものになりやすいという側面もありますし,「ポツポツしかない段階で,『全体はどうなるんだろう』という推測をする活動にあっている」ともいえます。 - でも,「ささっとやりたい」ときには,「ささっとできるといい」わけですけどね。 ** 2.2 例 |#00198-1215-01| -∠APB=60°になる点の集合を調べよ。 **2.3 こんな図を作図してみよう。 -(1) 定点A,Bと動点Pがある。PA = PBとなる軌跡を求めよ。 -(2) 定点A,Bと動点Pがある。PA = 2 PBとなる軌跡を求めよ。 **2.4 「PA= 2 PB」を調べる/調べさせる 上で「どんな図がいい?」 - 線分だけあって,「見た目」で調べる - PAとPBを測定して,「暗算」で比較する - 2 PBを自動的に計算して表示し,PAと2PBの値を比較する *** 「ねらう数学的活動によって,図は変わる」 - 関連することとして,「精度」も重要 -- 「数値が気になる」 -- 「ほんの少しでも違えば」違う -- 「ぴったり」なんて,ほとんどない -- あえて,整数値だけしか表示しないのも一つの選択肢 ** 2.4 概念の拡張(ことばと数式) - 「条件」は,高校数学では数式で表現される。 - 条件を数式で表現し,「変形」して処理していく...高校での数学IIでのねらい - 表現される数式は, Pを使うなら, f(P) = 0 - P(x,y)として,x,yで表現するなら f(x,y) = 0 *** 陽関数と陰関数という見方 - 「x が決まればyが決まる」 -- y = f(x) -- これまで扱ってきた普通の関数がこのタイプで,陽関数という。 - 「円」のようなものは x^2 + y^2 = r^2 のようにも表現できるが,これは「普通の関数ではない」 -- 無理やり扱おうとすると y = √(r^2 - x^2), y = -√(r^2 - x^2) -- でも,素朴に,x^2 + y^2 = r^2 で扱う方が自然 -- f(x,y) = 0 -- これを陰関数という。(implicit function) *** 陰関数というのは,「等高線」 - f(x,y)=0 という集合が,xy平面の中での「条件を満たす点の集合」でもあり,これは陰関数と呼ばれます。 - z = f(x,y) と,それぞれの点(x,y)において,値が対応している関数,つまり,曲面をイメージしてみてください。 - f(x,y)=k というのが,「等高線」になります。 ** 2.5 GC/html5では,こういう機能もある(が,生徒には使わせない) - 「測定」において,「数式 = 0」となるような集合を調べる形の数式をつくっておく - 「プロフッショナルモード」に変えておく。 - f(P)=0 に該当する点Pを少し動かしておく。 - 「測定」を表示すると,ボタンが表示される。 - ボタンを押すことで,自動的に軌跡を調べることができる。 *** なぜ,生徒には使わせないのだろう。 - 逆にいえば,どういう場合には適しているのだろう。 **2.6 GCには適していない問題 - 「二次曲線(関数)上の点」を使う問題 -- 「二次曲線」を基本的な幾何的対象として扱うことが,GCではできません。 -- でも,それを扱う問題は,教科書にはあります。 -- たとえば,GeoGebraなど,他のソフトを使うのも一つの手です。 - 「転がす」問題 -- 正方形を滑らないように転がす問題などもあります。 -- 「できないわけではないけれども」あまり適していません。 -- 個人的には,「モノ」を使えばいいんじゃないかと思います。 - その他,どの数学用ソフトでも,「扱う数学的対象」や「それに対する操作」の集合が規定されているわけで,それらはそのソフトで扱うのに適している「数学的現象の世界」があります。 -それをうまく見極めて,ソフトを選択する等が重要になっていきます。 **2.7 具体的な問題例(時間の余裕があれば) - 前回の問題を「発展」させてみましょう。 |#00199-1215-02| * 3.課題 **3.1 「条件を満たす点の集合としての軌跡」に関する問題と探究 -「条件を満たす点の集合」としての軌跡」の問題を一つ見つける/つくる -(1) その問題文は,「まなびネット」に書き込む -(2)実際に「動かして,条件を満たす点の集合について調べ,その様子をスクリーンショットした画面を取り込み,簡単にコメントしたWord文書をつくり,pdfで保存したものをまなびネットにuploadする -ファイル名は,「1215-自分の名前-条件を満たす点の集合.pdf」 **次回は -具体的な教材研究に焦点を当てていきます。