*0.はじめに **0.1 「松元実践」に関連して -「気づくのはむずかしい」というご指摘が多いですね。たしかに,「個人」として気づくのは,なかなかむずかしいと思います。一方,「小さな発見」はかなりたくさんありえます。それぞれの発見って,どれくらい『発見』と表現する価値があるのか,あるいは当たり前なのか。「見極める」活動も入っているのではないでしょうか。 -「全員が気づくこと」もあります。「40人いたら1人くらいは気づく」こともあります。一人ではむずかしいから,グループにゆだねるというのも一つの手です。クラス全員の総力を挙げてということもあります。 -「指摘があって,『そりゃそうだ』となったでしょうか。測定をして,『えっ』となったのではないでしょうか。測定は「どういう経緯の中で」取りくむことになったのでしょうか。かなり自然に流れていく工夫を読み取れたでしょうか。 -「気づく」のは,「ただ直観に任せるだけ」でしょうか。意識したら気づきやすくなるのでしょうか。それは,「図形を見る見方」をどの程度意識するかにも関わってくるでしょう。それを授業の最初にしておくのか,しないのか,あとで触れるのか,いろいろなスタンスがあると思います。 -「気づく」だけでは,数学の授業にはなりません。 -証明という観点でみると,この授業はどう評価できるでしょう。 -生徒の中での「会話」,いろいろな意味で,みなさんにとって,価値があったのではないかと思います。 -そういう話し合いは,みなさんは,生徒のときに,どの程度したでしょう。あるいは,「今」しているでしょう。 *** 資料 -「イプシロン」に掲載した,私の論文です。 -@http://hdl.handle.net/10424/00008538,GC を使った「学び合い」の授業のための教材研究の一例 -12/6 のGC 活用研究会(松元実践)に向けて-(2018) **0.2 みなさんの「問題」について *** 「自作問題」もいいけれど -自作問題について検討すること,それはいいことです。 --けっして否定はしません。 --でも,「自作問題」って,「玉石混淆」なのです。 --「どれくらい価値がありそうか」を見極めることが必要なのです。「石かもしれない」と思いながらさぐることが必要で,ときには「捨てる勇気」も必要なのです。 --そういうタフさを持って取りくんだとき,「玉」を磨きだすと,それはとてもうれしいことなのです。 -でも,それ以前に,「いろいろな資料を調べてみる」ことをしているのか? という疑問の方が先行しているのですけど。 *** 「問い」は大切 - 授業でいえば,「発問」です。 -「証明問題」のままであれば,証明することが主眼なので,「動かして調べる」ことはあまり意味がないことが多いです。 -もちろん,「証明の発見につながる」場合は別として。 ***「図」も大切 -これは今回の課題ではありませんが,「どういう図を与えるか」で,大きく変わってくることも実感してくれるといいですね。 ***「これらを育てる」可能性もありますけど -みなさんが提示した素材を,それぞれ育てていくことも,一つの可能性です。 -ただ,今回と次回は,GCのちがった機能等を理解しながら,授業化のための別の突破口を理解することをねらいとしていきます。 ***それぞれへの簡単なコメントなど -円上に4点A, B, C, D をこの順にとり、線分ACと線分BDの交点をEとする。このとき、線分AE, 線分BE, 線分CE, 線分DE の長さについて調べると、何が分かるか。 --方ベキの定理はいろいろな問題設定の仕方(図の与え方)がありますね。この問題文では「静的」なので,場合わけなどを期待するなら,問題文を変える必要がありますね。 -四角形ABCD上に点Pをとる。点Pは点Bを出発し点C、Dを通り点Aに着く。この時以下の問いに答えよ。(以下略)出典:教科書など --「動点問題」ですね。動きそのものを実現するという感じですね。何を問うのが一番適切でしょうね。また形を変える手もあります。 -ABCDが長方形のとき,対角線で分けた4つの三角形についてどのような関係性があるのかについて、考えなさい。 --「長方形」と固定すると,発展のしようがないけど...「問い」はどうする? このまま? -△ABCで辺AB、辺ACをそれぞれ一辺とする正三角形△ABD、△ACEを△ABCの外側に作る。このときBE=DCであることを示せ。 --これ,前回のヤツと同等じゃない? -四角形ABCDをこの順にとり、線分BDを仮にとったとき点Cが線分よりも点A側にある凹四角形を考える。この時、角A+角B+角Dが360°?角Cになることを証明せよ。 --証明問題だと静的が適しているように思いますが。 -四角形ABCDの辺BC、CD、DA、ABの中点をそれぞれE、F、G、Hとする。AとE、BとF、CとG、DとHを結び、これらの交点をI、J、K、Lとする。点A、B、C、Dを動かす中で、外側の四角形ABCDと内側の四角形IJKLにはどのような関係性があるか考えなさい。 --これは自作問題かな? どのあたりまでの解決あるいは発展を想定するかで,奥行きが変わってきますね。 -三角形の各頂点を三等分した直線の交点でつくる三角形はどんな形をしているか --まず,問題文がおかしくないか? また,自作問題だとしたら,自作問題をつくるのはもちろん「いいこと」なんだけど,どれくらいいい問題なのかがわからないので,しっかり自分なりに探究してみることが不可欠です。 -四角形ABCDのそれぞれの角の3等分線を引き、交わった点をつないだ四角形の形 --これも上記と同様で,自作問題かな? その場合,たとえば,「元になっている問題」も意識する方がいいけど,「四角形と角の二等分」の発展でしょうか。「三角形で三等分」は有名だけど,たぶん,証明は高校でも手におえない。でも,結果はきれい。四角形はむずかしいかも。 -点Aを中心とする円に弧BCをとりそこから円周上の点E, Dに対して、円周角を二つ作る。この二つの円周角が等しい ことを示せ --証明問題にしてしまうと,証明することしか仕事が残らないけど,この証明そのものへの取り組み方を想定していると思っていいですか?でも,(2)の記述ではそれはまだ意識していないみたいね。 -三角形ABCをとり、点Aを含む三角形ADEと点Bを含む三角形BFGをとる。三角形ABCと三角形ADEと三角形BFGが合同である場合、線分についてどのような関係性があるか考えなさい。 --これも,自作なのかどうかで,取り組み方も変わってくるね。また,最初の問題がかなりオープンなので,それもどう扱うかもね。 -四角形ABCDの対角線と平行な線を各頂点を通るように引いた時に四角形ABCDを囲うようにできる四角形がどのような図形になるのか。 --最初の条件からして,平行四辺形になるので,バリエーションはかなりかぎられますね。 -四角形ABCDで辺BCの中点となるEを作る。どうしてAE=DEとなるのは四角形ABCDがどのような図形の時か。 --なんか,文章がへん。でも,調べやすい問題といえそう。 -四角形ABCDの対角線の交点をEとし、AEとCEの中点をそれぞれF、Gとするこのとき、四角形BFDGはどのような形になるだろうか。 --平行四辺形からの一般化をしたわけでしょうか。いい形での一般化ができるのかな。むずかしいのかな。 -四角形ABCDを対角線分割し4つの三角形の外心で作る四角形EFGHの形はどうなるのか。 --共通する性質など対応表の次に注目しそうなターゲットは何でしょうか。 -星型になっている図形ABCDEのそれぞれの頂点の内角の和が180°になることを証明せよ。 --「証明」? -四角形ABCDに対角線を引き、対角線の交点をEとする。三角形ABE、BCE、CDE、DAEの内心をそれぞれF、G、H、Iとしたとき、四角形FGHIはどうなるか。 --「どこかにあった」問題だと思うけど,....で,これも対応表を元に,「次に」考えたいことはなんでしょう。 -円上に4つの点A,B,C,Dをとり、四角形ABCDを作る。この時四角形ABCDにはどのような特徴があるか。 --どういう流れで調べていくのか,また向かい合う角の和に注目するきっかけはどのあたりに想定できるのか,あたりが気になりますね。 -四角形ABCDがある。辺ABの中点を点E、辺CDの中点を点Fとする。四角形ABCD1の対角線を引いた時にBDとEFの交点を点G、ACとEFの交点を点H、対角線同士の交点を点Iとする。点G,H,Iが一点で交わる時、四角形ABCDはどのようになっているか。 --自作問題をつくってみて,探究してみて,「ちょっとこのままでは無理」と判断したという感じのようですね。自作問題って,かなりの割合で「そうなります」。゛だからこそ,「いい問題を発見する」と,うれしいのです。 -任意の三角形ABCがある。それぞれの辺の外側に正三角形を書く。その正三角形の重心を結んだ点はどのようになっているか。 --これ,何の定理っていうでしょう。また,どういう方法での証明がわかりやすい,どの学年・単元がいいのでしょう。 -定点A,Bをとる。弧AB上以外を動く点Pについて∠APB=30°になるような点をとってみよう。(啓林館中3) --これは,円周角の定理の逆で,来週の「条件を満たす点の集合」の一つの典型的な事例ですね。 -△ABCの線分AB,BC,CAを3等分する点をD,E,F,G,H,Iとし、線分DG,EH,FIの交点をJとする。 --3線分が1点で交わるということですか? -三角形のそれぞれの点から垂直二等分線を下ろし、その交わった点で出来上がる三角形がどうなっているか --いろいろと文章が辺だね。「どうなっているか」というのは,何を考えろということなのでしょう。 -円に内接する四角形ABCDの対角線を結び、同じ弧に対する円周角が等しくなることを示す。 --このままでは,証明問題だね。 -四角形ABCDの4つの辺の中点を結んで出来る四角形はどんなものか。図形を動かして調べる。 --これって,みんな知ってる「アノ」問題じゃないの? *1.「軌跡」 *1. 軌跡(1) **1.1 教科書等での「軌跡」とは - 高校の教科書等では,どういう記述がなされているのでしょう。 - みなさんの「記憶」から確認しましょうか。 **1.2 「GC」の中での軌跡は二つの側面で - 「動いた跡」としての軌跡 - 「条件を満たす点の集合」としての軌跡 *2. GCにおける「動いた点の跡」としての軌跡とその拡張 ** 2.1 仕様 - 「点」の「編集」において,「軌跡の色」を設定することが「準備」 - でも,それだけでは,軌跡は残らない - 「軌跡on」のボタンを押しているときに,残る - 「軌跡消去」のボタンで消える ** 2.2 例 |#00170-1208-01| -点Aを動かしてみよう。 -軌跡をonにして動かしてみよう。 -軌跡を消去してみよう。 -点Dだけでなく,Aの軌跡も残すといいよね。 -そういう観点で,点Aの軌跡を緑で残すように設定し,使ってみよう。 -この図を「観察」するなら,どんなことを生徒は発見してくれるのだろうか。 **2.3 こんな図を作図してみよう。 - △ABCがあり,その重心をGとする。 -頂点Aが,ある円上を動くとき,Gがどういう動きをするかを調べるようにしたい。 -たとえば,「教科書の例題」みたいにするなら,次のような条件の図をつくってみることにしよう。 -- Aは,「中心を(6,6)とし,半径3の円」上を動く。 -- Bは原点 -- Cは,(9,0)) ** 2.4 機能の拡張 - 古典的には,軌跡は「点の動いた跡」です。 - でも,GCでは,「直線や円など」の跡も残せるようにしています。 - それらは厳密には,「軌跡ではありません」 - 別の名称で扱うことになります。 |#00171-1208-02| -何の軌跡をどう残すと,興味深いことになるのでしょう。 * 3.教材研究 - 「教育用ソフトとしてGCを探究する」 **数学用ソフトのいろいろな側面 - 基本的には,「解けない問題や,簡単には解けない問題を,解けるようにする」 - ある意味で,「楽になる」 - 同時に,それは,「取り組むことができる数学の世界をひろげる」ことでもある。 -そして,そこにまた,未知の問題,未解決の問題などが発見され,さらなる研究開発の原動力になっていく。 **教育で「へたに使う」と - 「ずるい」方法 - 「カンニングの道具」 - 生徒がするべきことを奪ってしまう。 **「教育用数学ソフト」であるためには - どういう使い方をすることで,どういうことを実現するためのものであるべきか,を考える -- 教育目標を深めることもある。 -- 教材を変えることもある。 -- 教育方法,指導法をかえていくこともある。 -- など ** 少なくとも,教育用数学ソフトは - 「観察可能な数学的現象の世界」をひろげる。 -- 新しく,どういうものを観察可能になったのか -- 「百聞は一見にしかず」に該当する例は? -- 「いわれてみたら,そういうこともあるのか。紙だけでは気づくにくいね」という例は? --「これって,扱うことはできないけど,現象の観察だけなら,できるんだね」という例は? --「こうすることで,観察可能・操作可能になってくる数学的概念・方法がある」という例は? - 「答えを出す」こと以外に,生徒にとって価値がある活動は -- 「観察」することで,「次にこういうことを問題にしたい」等を考えるきっかけを提供する -- 「仮説」をつくり,証明等を考え,「検証する」ような活動 -- 協力しながら,データを集める /それぞれの見方等を出し合って,「そういう見方もあるか」を実感する - 「授業設計」のためのいろいろな選択肢 -- 軌跡に関していえば, -- わかりにくいところに課題がある事例であれば...「わかりやすい解説する」 -- 一定以上の力量がある生徒なら,解決は難しくない事例であれば... 「問題状況を提示し,紙で解決し,実験で検証する」 -- 現象から,問題を見つけるところを,先生から生徒にゆだねられることができるようにする -- 「いろいろな条件かえ」等をしたとき,今までだったら,「それは....無理」と先生がいうのではなく,観察から「なるほど,ちょっとこれは自分たちの手にはおえない」と自分で判断するようにする -- など ** 具体例からの検討 -授業の中で * 3.課題 **3.1 「動いた跡としての軌跡」に関する問題と探究 -「動いた跡」としての軌跡」の問題を一つ見つける/つくる -(1) その問題文は,「まなびネット」に書き込む -(2)実際に「動かして,軌跡について観察し,その様子をスクリーンショットした画面を取り込み,簡単にコメントしたWord文書をつくり,pdfで保存したものをまなびネットにuploadする -ファイル名は,「1207-自分の名前-軌跡.pdf」 **次回は -「条件を満たす点の集合としての軌跡」を中心に扱います。