*0.はじめに **0.0 「前回,何を学んだ?」 -「授業の中で」何を学んだ? -「課題に取り組んで」何を学んだ? -「動画等を使って」何を学んだ? -そして,「今回は何を学びたいの?」って。 **0.1 「軌跡」の問題など,調べる中で,何を理解しましたか? - 授業の中で扱ったこともあるけれど,「みなさんが調べる中で,自分で学んだこと」もいろいろとありますよね。 --基本的には,「問題」という形でoutputしてくれているはずです。 --それが該当するかどうかで,「評価」することもできます。 --一方,学校数学の中で扱っている「軌跡」は,かなり制約されています。 --「その周辺」に関して,「学んだこと」「考えたこと」があると,....期待しているところです。 *1. 軌跡(2) **1.1 条件を満たす点の集合としての「軌跡」 - 高校の教科書等での記述例 |平面上で,与えられた条件を満たす点全体の集合がつくる図形を,この条件を満たす点の
軌跡
という。| -具体例 --平面上で,定点Cから一定の距離rにある点Pの軌跡は,点C中心とする半径rの円である。 --平面上で,2定点A,Bから等距離になる点Pの軌跡は,線分ABの垂直二等分線である。 - 「軌跡」という表現をしていなくても,中学校でも上記は扱っているし,他にも同じようなケースはある。 -- つまり,軌跡は,高校では明確に概念化して扱う数学的概念だけれども,中学校でも暗黙のうちに扱っている。 **1.2 軌跡を扱うための「方法」 - 中学校では,「証明」(初等幾何的な概念としての合同,相似などを使う) - 高校では,方程式 **1.3 学校数学で「現実的に扱える」対象 - 直線 - 円/弧 - 二次曲線(楕円,放物線, 双曲線) - 潜在的には,それ以外も「軌跡」だけれども,処理する数学的方法がないので,教科書等には出ていない。 *2. GCにおける「条件を満たす点の集合」としての軌跡とその拡張 ** 2.1 仕様 - 「点」の「編集」において,「軌跡の色」を設定することが「準備」 - すると「記録」ボタンが表示される。 - 「条件を満たす」場所において,「記録」ボタンを押す - これを繰り返すことで,「条件を満たす点」が増えていく。 - 「どこに条件を満たす点がありそうか」を推測したり,「どう調べていくか」の方針を考えたり,一定の数の点が集まったときに,「どういう点の集合なのか」を考えるところに,数学的活動が生まれる ** 2.2 例 |#00090-0527-01| -∠APB=60°になる点の集合を調べよ。 **2.3 こんな図を作図してみよう。 -(1) 定点A,Bと動点Pがある。PA = PBとなる軌跡を求めよ。 -(2) 定点A,Bと動点Pがある。PA = 2 PBとなる軌跡を求めよ。 **2.4 「PA= 2 PB」を調べる/調べさせる 上で「どんな図がいい?」 - 線分だけあって,「見た目」で調べる - PAとPBを測定して,「暗算」で比較する - 2 PBを自動的に計算して表示し,PAと2PBの値を比較する *** 「ねらう数学的活動によって,図は変わる」 - 関連することとして,「精度」も重要 -- 「数値がきになる」 -- 「ほんの少しでも違えば」違う -- 「ぴったり」なんて,ほとんどない -- あえて,整数値だけしか表示しないのも一つの選択肢 ** 2.4 概念の拡張(ことばと数式) - 「条件」は,高校数学では数式で表現される。 - 条件を数式で表現し,「変形」して処理していく...高校での数学IIでのねらい - 表現される数式は, Pを使うなら, f(P) = 0 - P(x,y)として,x,yで表現するなら f(x,y) = 0 *** 陽関数と陰関数という見方 - 「x が決まればyが決まる」 -- y = f(x) -- これまで扱ってきた普通の関数がこのタイプで,陽関数という。 - 「円」のようなものは x^2 + y^2 = r^2 のようにも表現できるが,これは「普通の関数ではない」 -- 無理やり扱おうとすると y = √(r^2 - x^2), y = -√(r^2 - x^2) -- でも,素朴に,x^2 + y^2 = r^2 で扱う方が自然 -- f(x,y) = 0 -- これを陰関数という。(implicit function) ** 2.5 GC/html5では,こういう機能もある(が,生徒には使わせない) - 「測定」において,「数式 = 0」となるような集合を調べる形の数式をつくっておく - 「プロフッショナルモード」に変えておく。 - f(P)=0 に該当する点Pを少し動かしておく。 - 「測定」を表示すると,ボタンが表示される。 - ボタンを押すことで,自動的に軌跡を調べることができる。 *** なぜ,生徒には使わせないのだろう。 - 逆にいえば,どういう場合には適しているのだろう。 **2.6 GCには適していない問題 - 「二次曲線(関数)上の点」を使う問題 -- 「二次曲線」を基本的な幾何的対象として扱うことが,GCではできません。 -- でも,それを扱う問題は,教科書にはあります。 -- たとえば,GeoGebraなど,他のソフトを使うのも一つの手です。 - 「転がす」問題 -- 正方形を滑らないように転がす問題などもあります。 -- 「できないわけではないけれども」あまり適していません。 -- 個人的には,「モノ」を使えばいいんじゃないかと思います。 - その他,どの数学用ソフトでも,「扱う数学的対象」や「それに対する操作」の集合が規定されているわけで,それらはそのソフトで扱うのに適している「数学的現象の世界」があります。 -それをうまく見極めて,ソフトを選択する等が重要になっていきます。 * 3.教材研究 - 「教育用ソフトとしてGCを探究する」 **数学用ソフトのいろいろな側面(再掲) - 基本的には,「解けない問題や,簡単には解けない問題を,解けるようにする」 - ある意味で,「楽になる」 - 同時に,それは,「取り組むことができる数学の世界をひろげる」ことでもある。 -そして,そこにまた,未知の問題,未解決の問題などが発見され,さらなる研究開発の原動力になっていく。 **教育で「へたに使う」と(再掲) - 「ずるい」方法 - 「カンニングの道具」 - 生徒がするべきことを奪ってしまう。 **「教育用数学ソフト」であるためには(再掲) - どういう使い方をすることで,どういうことを実現するためのものであるべきか,を考える -- 教育目標を深めることもある。 -- 教材を変えることもある。 -- 教育方法,指導法をかえていくこともある。 -- など ** 少なくとも,教育用数学ソフトは(再掲) - 「観察可能な数学的現象の世界」をひろげる。 -- 新しく,どういうものを観察可能になったのか -- 「百聞は一見にしかず」に該当する例は? -- 「いわれてみたら,そういうこともあるのか。紙だけでは気づくにくいね」という例は? --「これって,扱うことはできないけど,現象の観察だけなら,できるんだね」という例は? --「こうすることで,観察可能・操作可能になってくる数学的概念・方法がある」という例は? - 「答えを出す」こと以外に,生徒にとって価値がある活動は -- 「観察」することで,「次にこういうことを問題にしたい」等を考えるきっかけを提供する -- 「仮説」をつくり,証明等を考え,「検証する」ような活動 -- 協力しながら,データを集める /それぞれの見方等を出し合って,「そういう見方もあるか」を実感する - 「授業設計」のためのいろいろな選択肢 -- 軌跡に関していえば, -- わかりにくいところに課題がある事例であれば...「わかりやすい解説する」 -- 一定以上の力量がある生徒なら,解決は難しくない事例であれば... 「問題状況を提示し,紙で解決し,実験で検証する」 -- 現象から,問題を見つけるところを,先生から生徒にゆだねられることができるようにする -- 「いろいろな条件かえ」等をしたとき,今までだったら,「それは....無理」と先生がいうのではなく,観察から「なるほど,ちょっとこれは自分たちの手にはおえない」と自分で判断するようにする -- など *4.代表的な「数学的活動」 ** 一通り「紙と鉛筆」での処理をした後で,「確認」 - 計算だけをしていても,「これって,どういうことをしているのか実感が持てない」ことは少なくない。 - 特に高校数学などで,「計算」中心に進めていくような場合に,「おわったあとに,ほんの数分みせて確認」 **問題提示→「計算など」→(確認) - どういう問題を考えたいのかを「理解」する上で,提示する - 生徒につけさせたい力は,「紙と鉛筆での計算など」と割り切るなら,そこは「使わない」 **点のプロットなどによって,「答えになるはずの場所」を調べ,仮説をつくる(言語化も重要)→「証明や計算」 - 調べる活動を中心とする。 - でも,「それで十分」では,計算や証明の必要性がなくなってしまうので,「その必要性を実感するようにする」ことも不可欠。 ** 問題つくりなどで,「結果が妥当かどうかがわからない問題について調べる」 - 計算や証明をする「価値がありそうかどうか」を吟味するところが重要になる。 *5.「条件変え」による問題つくり -今回の「課題」に取り組む上でも,いろいろと「条件変え」を生かしてくれていると思います。 -基本的に,「原問題と同じような,価値がある問題」を見つけたいと思って取り組むわけです。 -でも,にていてもかなり特徴が違う問題が生まれることもあります。 -「探究を深めていく価値がない」こともありえます。 -うまく見極めていくことが重要です。 * 6.課題 **6.1 「教材研究を深めたい問題」を見つけてくる - まなびネットに,「教材研究を深めたい問題」を二つ書き込んでください。 - 可能であれば,その問題を調べるための図を,GC/html5のサイトに,オンライン保存してください。 -- 名称は,自分の名前-5027-問題