*0.はじめに **0.1 少なくとも今後,感染状況が悪化しない限りは,「対面を基本」とします - 例外的な対処が必要な方は,事前にご連絡ください。 - このことへの対処はします。 - そういう意味で,授業の録画等は続けます。 -- 実際,いつ状況が悪化するかもわかりませんし,例外的に困った方に対処することは続けたいと思います。 -- でも,「ここ数回の様子」を踏まえると,「いい状況になっているとは思えません」から。 **0.2 「オンライン」がもたらしたものは何? - この際,このことは真剣に検討しておく方がいいと思います。いろいろな意味で。 *** みなさんにとっての影響 - 一つは,大学生としての1年半くらいを「オンライン」で対処せざるをえなかったことによってもたらされたことです。 - マイナスのことも,もちろんあるでしょう。それは世の中の「大学生」全体にいえることなのでしょうか。「たくましい大学生」にとっては,違うことなのでしょうか。 *** 本学での対応の適切性の検討 - 本学の学生のみなさんは,「おとなしい」です。 - でも,本学でのいろいろな対応が,「適切なのかどうか」を検討してみる価値はあると思います。 - なぜなら,数年後に,みなさんは教員になろうとしていますが,みなさんは,その学校で,似たようなケースがあったときに,どう対応するのでしょう。 - そのための「サンプル」として,本学の対応の様子,またいろいろな教員がどういうことを考えてどういう対応をしていたのかというここの様子など,いろいろな経験を「生かす」ことは大切だと思うのです。 *** 世の中で,「加速」されたもの。 - いろいろな変化が「加速」されました。 - 何がどう変わっているのかを,「実感」しているでしょうか。 - プラスのことも,マイナスのこともあります。それを「意識」しているでしょうか。 **0.3 「数学とICT」 - この授業を通して実感してほしいことの一つは,「みなさんの数学的活動などに関して,ICTはどういう役割を果たしているのか」ということです。 - 同時に,世の中での「数学の使われ方」はどう変わっているのか,学校の中での数学の世界と同じなのか違うのか。 - そういったあたりも実感してください。 **0.4 「学びのあり方を構成するものとしてのICT」 - 今回の「オンライン」あるいは,「オンデマンド」という学びの環境は,一般的には,「不可能を可能にしてくれるはずのもの」だと思うのですが,結果として,「学びの質を低下させるもの」としてしか,みなさんに対しては機能しなかったのではないかというのが,私の現時点での結論です。 - たとえば,「令和の日本型教育」では, 「学びの個別最適化」や,「協働学習」などもあげられていますが,それらを実現するための手段としてICTが想定されているのも事実です。 - この授業の中で提示するいろいろな「ICTの使い方」は,どういう意味で,「学びのあり方を構成するもの」として利用しようとしているのか,そこを吟味してみてください。 - 当たり前のことですが,「いいものは取り入れる」べきだし,「適切でないと思うものは,取り入れない」ことも大切です。 **0.5 背景としては,「社会構造と教育の関係」あるいは「授業というものの位置づけ」もあります。 -たとえば下記でかかれていることや,「3つのパラダイム」に関して,みなさんはどう思いますか? --@https://toyokeizai.net/articles/-/445856, 妹尾「先生の「授業の考え方」が学校間格差を広げる - ICT活用以前の問題、学習観・授業観を転換せよ」- **0.6 今日から「授業ビデオ」を - 今回,「玉置実践」を用意しています。 - まず,「生徒の立場で取り組んでみます」 **0.7 「前回」の残りをクリアすることよりも優先した方がいいかもしれないこと -本来であれば,「続き」を優先すべきですが,そうなると,ソフトの機能や,数学的内容についてのことに重点をおくことになります。 -しかしそれよりも,「先週私が感じた問題点と,その背景にあるもの」に焦点をあてる方がいいと思いました。 -また,「授業をみる」ことを,今週からはじめる方がいいと思いました。 -みなさんはどう感じるでしょうね。 *1.「問題」あるいは「問題解決」などに関連して **1.1 あなたにとって,「問題」とはなにか - 「どこかにある正解を早く見つけること」だけにこだわっていないか? - なんとなく,みなさんに感じるのが,「この点」です。 -誤解があるかもしれません。この点は少し議論できるといいのかなと思います。 -みなさんにとって,「問題とはどういうものでしょう」 -本来,この点はいろいろな観点から議論できるはずだと思いますが,「教育学部の学生」としては,どこかで議論を深めておいてほしい点だと思います。 **1.2 (数学に関連して)あなたが経験した「いい問題」とはどういうものか -「具体的な経験」を語れるようにすることは大切なことです。 -そして,それと一緒に,「なぜ,いいと思うのか」というところに,「根拠」あるいは,「問題の役割」がみえてくると思います。 -「あなたにとっての「いい問題」とその理由」は,今日の「課題」の一つにしておきたいと思います。 - 「いい問題」の所在は,多岐にわたります。 --大学入試問題にだって,「いい問題」はあります。 --授業で扱う問題の中にも,「いい問題」はあります。 --本で読んだ中での「いい問題」もあるでしょうし,自分で発見した問題もあるでしょう。 **1.3 「想定されている正解をどれだけ早く・正確に見つけられるかゲーム」だけが「問題」ではない。 - 入試や定期テストに象徴されるような問題も,もちろん「問題」です。 - でも,それが意味があるのは,「そこでいい点数を取ることが意味がある場合」のみです。 -「入試が終わった瞬間に」あるいは「期末テストが終わった瞬間に」,「忘れるべき知識やスキル」ということになるだけです。 - 「入試受けない」「成績どうでもいい」と思った瞬間に,「なんで,こんなばかばかしいことに努力しなければならないのか」と思うはずです。 **1.4 「いい点がとれる」こと以外に,「数学する」ことの魅力は何なのか? あなたにとって。 - どうせ,「自分が分かりきっているような知識」を,小中学生・高校生に教えるのが,教師という仕事だから,もう数学なんて学ばなくていい。 - そう思っていませんか? - ホンネとして。 -「今まで,他の人よりも,ちょっとだけ高い点数をとる事ができただけ」でしかないんじゃないですか? - だから,「ちょっといい点数を取るための解法を教えるだけなら,自分にもできる」と思っているのではないですか? - 「数学」って,あるいは,学校の中で実現できる「数学」って,もっと奥が深いと思いますよ。 **1.5 いろいろな観点があるけれど,....みなさんから引き出すことをねらいとしましょう。 -あるいは,「自分で調べたり,考えたりする」ことにしましょう。 *2.「教師は発問にこだわる」あるいは「問題は,ちょっと変えるだけで,大きく変わる存在である」 **2.1 「クローズドな問題」と「オープンな問題」 - 極端な言い方をすれば,「数学では答えは一つ」です。「そのような問い」のことを,クローズな問題といいます。 - 逆に,「答えが一つではないような問題」は,オープンな問題といいます。 -基本的に,「数学の問題」は,クローズであるように定式化されているのが普通です。 -そのように問題や解決を記述し,知識を体系化させ,文化を構築してきたものが,数学ですから。 **2.2 「与えられるものとしての問題」と「発見あるいは定式化すべきものとしての問題」そして問題状況 -「正解がどこかにあるはずの問題」というのは,「正解を知っている人がつくった問題」であり,「与えられた問題」です。 - 「与えられた問題」を早く正確に解決することにも,もちろん意味はあります。 - でも,世の中では,「問題は最初から明確になっているわけではない」ことの方が多いのです。 - 「困った状況」に対して,「問題を定式化」してみて,それを(数学的に)解決し,元の状況に反映させたり,さらに改良したり,あるいは,そこから新しい問題を「発見」することが可能です。 -別の言い方をすれば,「解決方法が確立しているような問題ならば,コンピュータが処理してくれる」はずなので,人間の役割は,それとは違うところに想定されるはずで,そこも経験することを,教育の場面の中では目指しているはずです。 **2.3 「一を知って十を知る」 - 「マイナスを知ってプラスを知る」ではありません。 - 一般化,抽象化,普遍化など,数学のいろいろな特性がありますが,それは「より広く知る」ための知のあり方でもあります。 - 解決できた問題(文)に対して,それを少し変えることで,いろいろな「新しい問題」を生成することができます。 --「数値を変える」ことも一つです。 --「変数の数を変えること」も一つです。 --「条件を変えること」も一つです。 --さらにいろいろな「問題の発展のさせ方」があります。 - 特に数学では,新しい「知識や方法」を生み出してその問題を解決した場合に,「その方法から見ると」問題の理解の仕方が大きく変わってきます。 --表面的な「変え方」から,より本質的な「変え方」も理解できるはずです。 **2.4 発問は,「ちょっと変えるだけでも,授業が大きく変わる」ことがよくある - これは,他教科を含めて,感覚的にも納得するような学びを,今後続けてください。 - 何が大きく変わるのか。それを感じられるような「感覚」を高めていくことは,とても重要です。 **2.5 変えたいもの/実現したいものの一つとしての「数学的活動」 - 「与えられた問題に対して,(どこかで習っていた)解法を当てはめて正解を導く」ような問いもあるかもしれませんけど,きっと多くの授業では,「それとは違う活動」を実現したいと思っているはずです。 - 「何が問題なのかをする」こともあるでしょう。そのために具体的な場合を調べてみるというようなこともあるでしょう。 - 「予想をたてる」こともあるでしょう。 - 「方針を考える」こともあるでしょう。 - 「今何に困っているのか」を考え,「どうしたらいいか」を考えることもあるでしょう。 - 「証明を考える」方がいいのか,「反例を見つける」方がいいのかを考えることもあるかもしれません。 - 「一人でじっくり考える」ことだけでなく,「グループで取り組む」こともあるでしょう。 - それぞれ,さまざまな「意図」があります。 **2.6 「教具」が変わることによって,数学的活動は変わる - 「紙と鉛筆(フリーハンド)」だけで考える場合と,「紙と定規・コンパス等で作図して考える場合」では,違います。 - 「シミュレーションを観察して考える」場合も違うでしょう。 - GCのようなソフトを「インターラクティブに操作して考える」のも違います。 - また,GCの場合には,「どんな図を示すか」によっても,大きく変わります。 ** 2.7 そういうことを考えるもっとも基本的な事例として,「4角中点」を提示してきたはずなんだけど。 ** 2.8 GIGAスクール時代には,さまざまな形でICTを使うはずだが... - ただ「便利な道具」として使うと,「今回」のようなことになってしまうかもしれない。 - 「ずるい道具」として「禁止する」だけになってしまうのかもしれない。 - もっとましな使い方ができる人材に「みなさんがなる」ためには,何が必要なのだろう。 * 3. 玉置実践の素材を,模擬授業的に取り組んでみる ----- * 1. 「条件を満たす点の集合」として軌跡(以下, 再掲) ** 1.1. 軌跡の二つの側面 - (1) 「動いた点の跡」としての軌跡 - (2) 「条件を満たす点の集合」としての軌跡 -- 高校の教科書では, どういう定義になっているでしょうか。(再掲) ** 1.2 条件を満たす点の集合の代表的な例 *** 中学校 - 2点から等しい距離にある点の集合としての垂直二等分線 - 2つの辺から等しい距離にある点の集合としての角の二等分線 - 円周角の定理の逆(A,Bに対して∠APBが一定になる点の集合としての..) - 等積変形 *** 高校 - アポロニウスの円 - 楕円など ** 1.3 振り返ってみましょう。 - 基本 -- 「2点から等距離にある」点の集合 = 垂直二等分線 -- 「2辺(直線)から等距離にある」点の集合 = 角の二等分線 - ちょっと変える -- 「点と直線から等距離にある」点の集合 = ??? -- 「1点から等距離にある」点の集合 = ??? -- 「直線から等距離にある」点の集合 = -- 「1点と円から等距離にある」点の集合 = -- 「直線と円から等距離にある」点の集合 = -- 「円と円から等距離にある」点の集合 = - さらに変える -- 「点Aからの距離と,点Bからの距離の「差」が一定の点の集合」 -- 「点Aからの距離と,点Bからの距離の「和」が一定の点の集合」 -- 「点Aからの距離と,点Bからの距離の「商(比)」が一定の点の集合」 -- 「点Aからの距離と,直線からの距離の「商(比)」が一定の点の集合」 -- など * 2. 「GCで点を動かすだけでの使い方」と「機能を生かした使い方」 ** 2.1 「例としての円周角の定理の逆」 |#00058-1118-01| ** 2.2 ホワイトボードに投影しているなら - 点Pを動かす - ∠APB=60になったら,(ホワイトボードに)プロットする。 - たまっていく - どう? ** 2.3 PCでは困るのかな? - 「かくわけにはいかない」 - でも,タブレットなどの上に何か乗せる手も....あるよね。 ** 2.4 GCの機能を使うとしたら - まず, 軌跡の設定をしておく。 - 軌跡のスイッチはoffのまま - 該当する場所で「記録」ボタンを押す ** 2.5 生徒の「数学的活動」として注目したいことは? - 協力しながら点をプロットする(数学的? それとも...) - 「どこに, どうやって点をとっていくといい?」(戦略) - 「どういう集合と言語表現したらいい?」 - 「そうなるはずだという証明をどうやったらいい?」 ** 2.6 TIPS - 測定値の工夫に気づいた? - どうしてそうなっている? * 3. 練習問題 ** 3.1 アポロニウスの円 - 実際に作図をして保存をしよう。 - どういう授業の流れを想定できるのだろうか。 ** 3.2 等積変形 - 実際に作図をして保存をしよう。 - どういう授業の流れを想定できるのだろうか。 ** 3.3 楕円 - 実際に作図をして保存をしよう。 - どういう授業の流れを想定できるのだろうか。 ** 3.4 みなさんの問題から - 実際に作図をして保存をしよう。 - どういう授業の流れを想定できるのだろうか。 * 4. もう少し高度な使い方もある...でもね。 ** 4.1 「上記の使い方」は,「ホワイトボード」あるいは「タブレットとOHPシート」的活動 - きっと中学生ならうまくいく - 高校生だと....? - 「ちょっと工夫した問題」や「条件を変えてみていろいろな場合を調べたいと思うと」...もっとコンピュータらしい作業をさせたい。 ** 4.2 一応できます。そういうこと。 - 基本的な概念としての「陰関数」 - f(P)=0 という式 - 測定値に関して, 「ある測定値 = 0 」となる集合を自動的に描画させる機能 - エキスパートモードへの切り換え - デモ ** 4.3 この機能を使って調べてみよう。 - 楕円 - でもね。(続けて) ** 5. 別の方法(動いた点の跡として表現する方法) ** 5.1 垂直二等分線 = 2点から等しい距離にある点の集合 - 教科書的には.... 「2点を中心に等しい円をかく」...たくさん。 - それをGCで実現するには, .... - 「等しい半径」で円をかくということを,実現するには ** 5.2 アポロニウスの円 - 半径 x と半径 x だったら, 垂直二等分線 - この場合には, どうだったらいい? - 「数式」という機能を使う ** 5.3 楕円 - チャレンジしてね。 - 数式でなく, 図で使う方法もあります。 ** 5.4 TIPS - 「見せない」方がいいこともある。 - そういう場合には, 「色を無色」にする **6. サイクロイドって, ***6.1 作図することって,できるのかな。 - できないわけではないです。 ***6.2 その図の「価値」は? - 動かしてみて,「フーンなるほど」ということ以上の価値を見いだすなら,つくる価値があります。 - 逆に,「みせるだけ」なら....やっぱり,「それだけの価値かな」 - 「実物」の方がいいんじゃない? -- と,私は思ってしまったりします。 *7. 課題 ** 7.1 「今日の授業の感想」などを「まなびネット」に書き込む - 今日の感想 / 次の視点のどれか -- a. 「この話題」について 「こういう点がよくわかった」 / 「こういう点がよくわからなかった」 -- b. 教師の観点からの教材研究について,自分の理解が深まったという点 -- c. ICT利用に関して,自分の理解が深まったという点 -- d. 「CIIという授業に関して」,「ここがよかったから継続してほしい」「ここがよくなかったから改善してほしい」という点 -- e. その他 ** 7.2 あなたがこれまでに出会った「問題」の中で,「いい問題」と感じる問題と,それに関わる体験を,簡単でいいので,まとめてまなびネットに書き込んでください。 ** 7.3 玉置実践に関して -「教科書」に掲載されているように,この素材は,1992年11月に,附属名古屋中学校にて,玉置先生が実践しました。 --つまり,写っているのは,29年前の中学生です。(さすがに,みなさんのご両親よりも,少し若い世代ですよね。) --この頃は,コンピュータ室で行っていました。 -もちろん,機器などは今とは違います。 -今実践するとしたら,「変えると思える点」もあるでしょう。 -でも,「そのまま通用する点」もあるでしょう。 -この実践は,おそらくこういう形で実践したことは,「初めて」だったでしょうが,きっとみなさんの世代の中で授業として受けた方もほとんどいないと思います。 -「自分が生徒の立場で参加してみた素材」について,生徒目線で,あるいは教師目線で,観察してみてください。 -@https://ml.visuamall.com/ml5/aue_project/api/embedded/?em=_pOAcyl4XGvTt9jGq0UA-A..rV6nYAQnBKdiZKE6mxRkQQ..,1時間目 -@https://ml.visuamall.com/ml5/aue_project/api/embedded/?em=QKueZfZ1DxwQbMAUcq6kWQ..vKVEG40g9OtZ7igXw5Kclw..,2時間目 - mlで流したid, pw にて,授業の様子を観察しなさい。 -次の観点の一つあるいは複数で,授業に関する感想をまとめ, まなびネットに書き込んでください。また,他の人の感想をみて参考にしてください。 --a.課題の工夫 --b.教師の行動に関して注目した点 --c.生徒の行動に関して注目した点 --d.「今だったら,こういうところをこう変えることができるのではないか」と思う点 --e.その他