*2.観察して「おしまい」ではない。 **2.1 宿題の課題って, 「そんな簡単なはずはないんだよ」 - 宿題となっていた「課題」いかがでしたか? - 「なんだ, こんな簡単な問題」って, 思ったんじゃないですか? - いや, これは中学生や高校生に対する課題ではありません。 - 中学生や高校生にも出す課題だけれども, 「大学生が考えるに値する問題」と思って出しているのです。 **2.2 まず, 2次関数の方からみてみようか。 - cは簡単だよね。 - bは「おもしろい」よね。たぶん, これは気づいている人は多いはず。 -- 「必ず通る点」に注目した人もいるでしょう。 -- 変化の「方向」に注目した人もいるでしょう。 -- より明確に表現するなら, 「頂点」に注目するといいですね。 -- 頂点の座標を計算した人もいますね。 -- 「頂点の軌跡」の式はどうなりますか? - aの変化, とてもおもしろいのですが, きちとん「注目すること」や「ことばで表現」したり, 「式で表現」したりできましたか? -続きは, 映像をみながら, ...
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**2.3 「四角形の4つの辺の中点を結んでできる四角形」についての「代表的な答え」 - たとえば, 最初の課題, 次のような結論が「ありそう」な答えです。 |ABCD|EFGH| |正方形|正方形| |長方形|ひし形| |ひし形|長方形| |平行四辺形|平行四辺形| |四角形|平行四辺形| -でもね。大学生に対して, 「これでおしまい」のような簡単な課題をだす「はずがない」のです。 -これは出発点。 -「これでおしまいのはずはない」と思ったとき, 次に何をしたくなのかが問題なのです。 - あるいは, この結果は, ある意味「教科書的」です。 - でも, 別の観点から考えると, この表って, 「ある意味特別」なんです。
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**2.4 ストーリー(1) : 突破口としての「台形」 - 40人の結果を集約したら, 次のようになっているかもしれない。 - なぜですか? -次, どういう展開がありうる? |ABCD|EFGH| |正方形|正方形| |長方形|ひし形| |ひし形|長方形| |平行四辺形|平行四辺形| |台形|平行四辺形, ひし形| |四角形|平行四辺形|
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**2.5 ストーリー(2) : 「いつも平行四辺形?」 |ABCD|EFGH| |正方形|正方形| |長方形|ひし形| |ひし形|長方形| |平行四辺形|平行四辺形| |四角形|平行四辺形| - 正方形もひし形も長方形も, 平行四辺形の特別な場合だから, 「いつも平行四辺形!」 - 「ABCDがどんなときでも, EDFHは平行四辺形」 - 「いつも」じゃないっていう子は??? - 「こんなときもできる」→ どう表現したらいいの? - 中学生としては, 「どういう活動にできる?」 - 高校生だったら, 「どういう活動にできる?」 - 大学生だったら, 「どう解釈する?」 - それらをすべて, 中学生や高校生に「教えなければならない」わけではないし, 彼らが, 「そう理解しなければならないわけではない」 - でも, この図形を動かしながら行える「数学的探究の広さや奥深さ」をわきまえておかないと, 「表面的なことだけを教えておしまい」ということになる。
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**2.6 ストーリー(3) : 「4つの三角形が気になる」としたら -ここには, 外の四角形と, 中の四角形がありますが, 他に, 三角形も4つあります。 -それに注目すると,... どんな数学がつくれるのだろう。
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**2.7 ここでは, どういう「対話」をしていることになるんだろう。 - 一人だけでの「対話」と思うと, 数学的問題との対話ともいえます。 - 「人とコンピュータあるいは画面」との対話ともいえます。 -- この種のソフトは, 「interactive software」とか, 「対話的ソフト」といったり, そういうことができるようにするための設計を, 「intgeractive interface」と言ったり, さまざまな概念がありますが, 重要なのは, 「interactive」ということです。 -- 画面をマウスやタッチで触って動かすわけですが, それはある意味「観察」です。でも, 「次にこうしたい」と思いながら動かす観察であったり, 「え, 予想と違ってそうなるの?」と思ったり, 「動かしながら, あれ, ここ動かないよね」と気づいたりすることの連続です。 -- それはある意味「気づく」という行為ですが, それをきちんと「ことばにする」つまり, 「外化する」ことがあって初めて, 「対話が動き始めます」 - 二人とか,四人で, iPad上のこのソフトを操作しながら議論することがよくあります。一人だけで「独り言」をいう生徒はそれほどいませんが, 複数の生徒で取り組んでいる方が, 「言語化」や「操作」が活発になります。 -- そのため, これまでの実践の多くでは, 生徒のグループ活動をほぼ確実に取り入れてきました。 --つまり, これは「生徒同士の対話」であったり, 「学び合い」です。 -授業としては, それ以外に, 「先生と生徒」のやりとりがあります。これもある意味, 対話です。 -- 多くの場合, 先生の発言には, 「意図」があります。 -- 生徒が発見してくれたことなどを受け止めつつ, 次の流れがいい方向に流れていくように考えながら, 次の発言を工夫します。 - そういう, いろいろな「対話」の存在, そしてそれは教員としては, 「観察すべきもの」であったり, 「聞き取るべきもの」であったり, 「自分が構成すべきもの」であったりすることを, まず意識してください。 **2.8. 具体例(3) - 前回の問題は, 文章化すると, 次のような問題だったといえます。 -- 四角形ABCDの4つの辺AB,BC,CD,DAの中点をそれぞれ E,F,G,H とする。このとき, ABCDの形とEFGHの形の関係について調べよ。 - 今回は, 「辺の中点」を「角の二等分線」に変えてみたいと思います。つまり -- 四角形ABCDの4つの角の二等分線をひき, それぞれの交点を, 図のように E,F,G,H とする。このとき, ABCDの形とEFGHの形の関係について調べよ。 |#00002-0515-1| **2.9 課題 -A. 次のことに関して, wordにまとめ, メールで yiijima@auecc.aichi-edu.ac.jp 宛に提出すること。 --期限 : 5/20 24:00 まで --(1) 四角形の4つの辺の中点を結んでできる四角形の問題について, 上記のストーリーの中の一つを選んで,それをきちんと数学的な記述をせよ。そして, 証明もせよ。(もっと深い展開を見つけたら,それに基づいて記述してもいい) --(2) 具体例(3)の問題について, 「対応表」をつくれ。そして, そこから「次に考えるに値する問題」をつくれ。可能ならば, それを解決せよ。 -B. 授業のメーリングリスト上で, 「これからの数学教育でのICT利用」について, 議論したいと思います。できれば, 次の話題について投稿してください。 -- (1) (今, オンライン教育がいろいろなところで始まろうとしていますが) これからの数学教育の中で, 重要になってくるのではないかと思う使い方など(前回の続き, 最近のニュースなどからでも感じた話題があったら, それを紹介して議論してもいいです。) --(2) 前回使った「Grapes」で, 関数のグラフについて探究するとしたら, 「こんな問題について扱うといい」と思う具体例があったら, 紹介してください。 --(3) 「四角形の4つの辺の中点をむすんだ四角形」の条件を変えて, 「四角形の4つの角の二等分線の交点をむすんだ四角形」に変えました。同じように条件を変えて, 「こういう問題について調べてみるといいのではないか」という例を上げてみてください。